⑱ 大人のやり方、してますか?
2010年5月1日 連載病院の個室では、じいさんが寝ている。若い女が横でリンゴをむく。
「はい、あんして」
向かいで口を開けたのは適当先輩だった。さきほどまで同級のサトミが無神経に差し出す。
「バカ井くんの言ったとおりなのかな・・・」
「何が?」
「きのう病院に運ばれたときほら、バカ井くんがドクターにチラシ見せて、指摘してたじゃない」
「ステキ?あいつが素敵なのか。もういいよ!」
「バカ!」
「冗談だよ。冗談」
サトミは適当先輩に、ナイフを突きつける振りをした。
バカ井が指摘していたのは・・・転倒のしばらく後に発生しうる、重度の合併症だった。頭を打撲して帰宅、翌日に意識不明というケースがありうる。今でもどこかでこういう事態が起こっている。
到着したのは・・・シンゴだった。
「はあ!はあ!なんだよじいさん!生きてるじゃんかよ!オレのほうが先に死んじゃうんじゃないかって!適当先輩!ああもう先輩じゃないんだった!留年したからな」
「ふざけんな。おいふざけんな」
血の気の多い適当は立ち上がった。
「俺たちがじいさんの急変を知って、それからお前が来るまでどんだけ待ったと・・・」
「はは!はは!そうっすよね!あれバカ井が来てねぇじゃねえかよ!あいつ未だにバイトばっか行きやがって!くそまだケータイがねぇ時代だからよぉ!早くケータイの時代来てくれねぇかよぉ!」
バカ井が大汗で現れた。
「うわ!入院してる!」シンゴが後ろからたたいた。
「だから病棟へ来たんだろうがこのオタンコナスビ!」
「ほら!やっぱり僕の言った通りじゃないか!適当先輩。どこから連絡が?」
「いや、それがさ。オレとサトミ・・あ、いや実はつい最近できちゃったんだけど」
「ええっ?子供が?」
「バカヤロ。ヤボなこと言うんじゃねえよ!」
「びっくりしたぁ」
「2人で見舞いに行ってベル鳴らしたら不在でさ。ドア突き破ったら、じいさん真っ青なんだよ」
「そりゃ驚くでしょう」
「違うんだよ!体がピクピクしてたんだよ!それで救急車呼んで・・・」
病室は賑やかになってきた。途中で入るナースも睨みを利かす。
「もうすぐ回診ですので。ご退室を」
「(林檎ら)はーい!」
ドクターらが6人ほど。年寄り院長が若い主治医へつぶやく。若い主治医は、きのうテンパッテた医師。入院をあえて勧めなかった。
「えー。昨日転倒していたところを発見され、当院へ搬送。そのときのCTは異常なし。付添い人の希望により自宅へ戻りました。意識障害で搬送入院・・・これがさきほどのCT」
「みごとに血腫がたまってますなぁ」
シンゴは廊下から顔を出していた。まもなく廊下側へ。
「野郎!何が<転倒していた>だ!何が<付添い人の希望>だ!都合のいいことばっかり言いやがって!」
バカ井は、適当先輩へ感謝した。
「気になって、行ってあげたんですね・・・」
「いやさ。お前のあのチラシの話が妙に印象に残っててさ(嘘)。ひょっとしてひょっとすると、ひょっとするかもってさ」
実は、置き忘れた傘を取りに戻るのが目的だった。
主治医はさらに説明。
「えーただ今連絡のあった長男の希望により。処置は一切なしで」
「ええっ?」
みな振り向いた。叫んだのはバカ井だ。
「君・・・」院長が不思議がった。
「だって。だって。血がたまってるんでしょ。ふつう・・・抜かないですか?ドレナージってほら。頭にこうして」
みな呆然とした。サトミがさきほど持っていたナイフをつい(?)、バカ井は自分の頭に浅くとも刺したのだ。反射的に手を持っていく。
「あっ?危ない危ない。タッチ!♪手をのば~して。ん?」
バカ井の周囲、みな呆然と立ち尽くす。廊下から入ったシンゴがやっと、口を開いた。
「エーーーーーーーッ?」
(フォローなし)
「はい、あんして」
向かいで口を開けたのは適当先輩だった。さきほどまで同級のサトミが無神経に差し出す。
「バカ井くんの言ったとおりなのかな・・・」
「何が?」
「きのう病院に運ばれたときほら、バカ井くんがドクターにチラシ見せて、指摘してたじゃない」
「ステキ?あいつが素敵なのか。もういいよ!」
「バカ!」
「冗談だよ。冗談」
サトミは適当先輩に、ナイフを突きつける振りをした。
バカ井が指摘していたのは・・・転倒のしばらく後に発生しうる、重度の合併症だった。頭を打撲して帰宅、翌日に意識不明というケースがありうる。今でもどこかでこういう事態が起こっている。
到着したのは・・・シンゴだった。
「はあ!はあ!なんだよじいさん!生きてるじゃんかよ!オレのほうが先に死んじゃうんじゃないかって!適当先輩!ああもう先輩じゃないんだった!留年したからな」
「ふざけんな。おいふざけんな」
血の気の多い適当は立ち上がった。
「俺たちがじいさんの急変を知って、それからお前が来るまでどんだけ待ったと・・・」
「はは!はは!そうっすよね!あれバカ井が来てねぇじゃねえかよ!あいつ未だにバイトばっか行きやがって!くそまだケータイがねぇ時代だからよぉ!早くケータイの時代来てくれねぇかよぉ!」
バカ井が大汗で現れた。
「うわ!入院してる!」シンゴが後ろからたたいた。
「だから病棟へ来たんだろうがこのオタンコナスビ!」
「ほら!やっぱり僕の言った通りじゃないか!適当先輩。どこから連絡が?」
「いや、それがさ。オレとサトミ・・あ、いや実はつい最近できちゃったんだけど」
「ええっ?子供が?」
「バカヤロ。ヤボなこと言うんじゃねえよ!」
「びっくりしたぁ」
「2人で見舞いに行ってベル鳴らしたら不在でさ。ドア突き破ったら、じいさん真っ青なんだよ」
「そりゃ驚くでしょう」
「違うんだよ!体がピクピクしてたんだよ!それで救急車呼んで・・・」
病室は賑やかになってきた。途中で入るナースも睨みを利かす。
「もうすぐ回診ですので。ご退室を」
「(林檎ら)はーい!」
ドクターらが6人ほど。年寄り院長が若い主治医へつぶやく。若い主治医は、きのうテンパッテた医師。入院をあえて勧めなかった。
「えー。昨日転倒していたところを発見され、当院へ搬送。そのときのCTは異常なし。付添い人の希望により自宅へ戻りました。意識障害で搬送入院・・・これがさきほどのCT」
「みごとに血腫がたまってますなぁ」
シンゴは廊下から顔を出していた。まもなく廊下側へ。
「野郎!何が<転倒していた>だ!何が<付添い人の希望>だ!都合のいいことばっかり言いやがって!」
バカ井は、適当先輩へ感謝した。
「気になって、行ってあげたんですね・・・」
「いやさ。お前のあのチラシの話が妙に印象に残っててさ(嘘)。ひょっとしてひょっとすると、ひょっとするかもってさ」
実は、置き忘れた傘を取りに戻るのが目的だった。
主治医はさらに説明。
「えーただ今連絡のあった長男の希望により。処置は一切なしで」
「ええっ?」
みな振り向いた。叫んだのはバカ井だ。
「君・・・」院長が不思議がった。
「だって。だって。血がたまってるんでしょ。ふつう・・・抜かないですか?ドレナージってほら。頭にこうして」
みな呆然とした。サトミがさきほど持っていたナイフをつい(?)、バカ井は自分の頭に浅くとも刺したのだ。反射的に手を持っていく。
「あっ?危ない危ない。タッチ!♪手をのば~して。ん?」
バカ井の周囲、みな呆然と立ち尽くす。廊下から入ったシンゴがやっと、口を開いた。
「エーーーーーーーッ?」
(フォローなし)
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