21. もたせ(られ)たこと、ありますか?
2010年5月14日 連載病院では、昼間の院長による総回診。
転倒して血腫を見逃された、じいさんの主治医が淡々と説明。
「まーこの人は。もうええかって感じです」
「転倒して、血腫ができて・・・今日のCTでもいっそう拡大しとりまんな」
「ま。なんもせんですけどね。もう年ですから。ま、撮るもんは取っておきますけど!も!」
院長の体がかすかに揺れた。
「うっ・・・?」
うなだれ、壁にもたれこんだ。
みな、覗き込んだ。タオルをもった総婦長が肩を叩く。
「院長?ひょっとして・・・いや困った。次の院長引継ぎ、どうひまひょ」
「ならん!」院長ライクなダミ声。
「わっ!生きてる!」
みな散らばった。
うつむいたままの院長は、なにやら喋りだした。
「知ってるぞお前ら。匿名で聞いたが、じいさんを家に帰らせたこともな」
「ひっ!なぜそこまで?」主治医がビビッた。
「わしが週に1回しか回診して、そのあとパッパラパーなのは認める。だがな、そこを逆手に利用して都合の悪いことを打ち明けないのは許さん!」
「わわ・・・!でもあれは、がが、学生らが無理矢理連れて帰るって、それで」
「大うそつきが!もうバレとるわ!」
主治医は土下座した。
「すみません!この件はどうか!」
「もう来んでいい。あるいは・・・」
「ああ!あるいは何でございましょうか!」
少し、間。
近くのコーナーで、蝶ネクタイを引っ張るコナン坊。
「一ヶ月の給料カットを命じる。今月振り込まれた金額を、以下の口座に・・・番号は・・・」
「ちょ、ちょっとそれはやりすぎなんじゃ、ないのかい?」
コナン坊は振り返った。
「どうするよ。あんたの口座だぜ」
「ええっ?それって、ど、どうなのかな。平和に使うならいいのかな」
「おいおい・・・」
院長はウトったまま。
「このじいさんは、まだ助かる!」
「ですが、家族は救命を希望しては」
「人類、みな兄弟!その中のわしが救えといっている!」
「ひっ・・・わわ、わかりました!」
主治医は早速、脳外科医をつれて来た。
「・・・てなわけで」
「ふんふん。では、しましょう!」
話が進み、ベッドはオペ室へと運ばれていった。
コナン坊はネクタイで最後の指令。
「つかれた。スタッフはわしを抱きかかえて、眠らせてくれ」
スイッチを切ったところ・・・
バカ井が勘違いして、コナン坊を持ち上げようとした。
「わあっ!何をするんだ!ヘンタイ!」
「えっ!だって!」
さすがに、見つかった。総婦長が笛を吹く。
「ピー!そこで何をしている!」
絶望していた主治医が、コナン坊・バカ井の視線を追った。何かを悟った。
「あっお前ら・・・!ひょっとして今のは!」
「分かるところが、マンガだよなー」コナン坊が牙をむいた。
「やっぱり作り話だ!医師の指示により、奴らをひっとらえろ!」
コナン坊はサッカーボールを足元においた。
「歯!くいしばれ!」
ドカーン!と蹴られたそのボールは一直線、主治医の急所にぶち当たった。
「ぐあああ!」
コナン坊は何か思いついた。
「モッコリ中心、いやモロッコ中心のマラケッシュ。てかぁ」
バカ井が手を叩いて喜んだ。
「やったやったあ!正義は勝つんだ!あはは!」
「何言ってんの、お兄ちゃん?」
「えっ?」
コナン坊は、つぶらな瞳に戻っていた。
「君がやっつけたじゃないか!」
「知らないよ。僕。何のことだか」
瞬く間、守衛らに取り囲まれた。のはもちろんバカ井のほうだ。
バカ井の将来がいきなり灰がかった。
「この・・・!」
しかし、コナン坊は遠くを指差した。
「おまわりさん。犯人はあっちへ逃げてったよ」
守衛らは、みなあっち方向へ走った。
バカ井は肩を落とした。
「はぁ。死ぬかと思ったよ」
「恩返しだよ。エロ本の罪かぶって・・やべっ!」
「えっ?なんだって?」
コナン坊はあちこち隠れようとした。
「まさか!とにかく!ついに!」
「おい待て!君は何者なんだ!」
コナン坊は観念した。
「じゃ、紹介といくか。我輩はコナン坊。名前はまだない」
「あるじゃないか!」
「どこで生まれたか、とんと見当がつかねぇ。ただ、美人のおねえさんに連れられて、ホテルに行ったことは覚えている」
「何かと、ごちゃまぜになってないかい?」
「動揺したオレは目がくらみ、薬を飲まされてしまった」
「で、気がつくと・・・今の君が?ってわけ?」
コナン坊が、いきなり震えだした。
「くっ・・・!」
「あれ?」
「つつ・・・」
「つつ・・・つつがむし?」
コナン坊は、大口を聞けて、叫んだ。
「つつもたせ(美人局)に、あってしまったんだー!」
「ノオーーーーウーーーーーー!」(スロー、劇画調)
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