医局人事の場合、その病院の医師を一方的に解雇するのは不可能に等しい。大学医局が<問題児>を常勤として預ける代わりに、融通を利かせているケースも少なくない。
医局人事に縛られない場合(今はこのタイプが多いと思う)、経営者はその医師を解雇することは可能。もちろん、それ相当の理由があってのことだが。その理由を挙げてみよう(自分の経験上の頻度順)。
① 働かない ・・ 医局にずっといて呼ばれても出向かない。これは論外であり解雇は当然。
② ナースらに怒鳴り散らす ・・ つまりすぐキレる。周囲の職員が次々と辞めていくことにつながるから。ただしことの良し悪しとは次元は別。
③ 収益が上がらない ・・ 内科なら検査をあまり出さない、外科ならオペ患を断る、など。給与の減額を提案してみることもある。そこで頑張るかどうか。
④ 女性問題 ・・ モラル的な問題があまりにも表面化した場合。特にこれは偶然なのか、経営者側にとってマスコット的な女性に手が出ていることが多い。
⑤ わがままが多い ・・ 会議で煽動したり、病院の雰囲気を変えかねない危険分子。
僕らも解雇を決定したとき、さあどうやって辞めてもらうか・・・悩むことは日常だ。こんな感じで通告している。
「先生、まあ誠に申し訳ないのですが・・ええ。それがですね。あのですね。実はある一部の部署からクレームがありまして。それがね。けっこう前からなんですよ。内容は、まあズバリ言いますと・・・なんです。心当たりは・・・ええ。ええ。まあ先生の言い分もあるとは思うんですよ。でもね。先生がそう思われるのに対して、周囲の多数の人間が同じ声をあげてまして。それで現場がけっこう混乱してるんですね?このままでは、病院の機能自体がマヒしかねんと。そこで先生をお呼びしたわけですね。ですのでここは誠に先生に言いにくいのですが、先生がこのままこの病院で勤務を継続されるのは、ふさわしくないのではないかと。いやいや、先生の仕事とか人格を否定するのではなくて。ただ、この病院でやっていくことに対してです。これはね。僕らはじめ経営側の意見です」
この言い回し。わかるだろうか。疑問符に遠まわし。何気ない尊敬抜き語。実に効果がある。
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