ヤン医師3

2011年12月4日 連載
「施設より連絡!20名の発熱に呼吸困難!」事務より入電。

「受け入れの余裕は?」とヤン医師。

「5床しか空いてません。救急隊はもうこっちへ向かって・・あと3分!」

「受け入れをOKしたのは?」

「はぁ。なんでも・・・うちの助手先生が受け入れろと」

「自宅からか、やれやれ。そんなに僕を貶めたいかねー。ま。すべての悪は、スタンドプレーが基本だからな」

「救急車、来ます!はえぇよ!」

「慌てるな。想定外は世の常だ。君は早く空床を作る努力をしろ」

「し、しかし・・・」

「それが終わったら、紹介先の施設へ飛んでくれ」

「はっ?」

救急患者の診察。救急室があふれる。

「なるほどな。どうりで・・・別の事務員?空床は?」

「各病棟、1床もゆずりません」

「オーバーベッドなら何とかなるはずだ。軽症患者は外来のベッドへ移すんだ。これは命令だ」

「師長の許可がいります。なら絶望的です」

「師長ね・・はいはい」

外線を、プルルの1回で切る。

「よし!師長は不在だ!連絡がつながらん!」

「えっ?でも・・」

「うーん・・・この病棟に余裕があるな。師長が見つからない今、主導権は私にある。物理的に空けてくれ」

「は、はぁ・・い、いま!師長から折り返しコールが!」

「言っておけ。私は手が離せない」

 施設より事務員から連絡。
「いま、着きました。私は何をすれば」

「風呂場か貯水槽の水を、取ってきてくれ。たぶんレジオネラが出るだろう。証拠だよ」

 なんとか病床が埋まる。また事務員から携帯へ電話。
「ヤン医師。まだ手が離せないのはどういうことかと助手先生が!」

「まだ手が離せないんだ。前立腺が腫れててね」

 神経とは裏腹に、尿線が細いヤン医師だった。これでもってして、施設はレジオネラの隠ぺいの開示を余儀なくされ、長年10年に渡るレジオネラ肺炎発症に終止符を打つことになった。

 しかしこのあと、誰にも予想できなかった事態が降りかかろうとは、ヤン医師含め誰も知る由がなかったのである。

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