大学病院医局の一風景
2012年4月21日 連載今回は、大学院生が収集され研究成果を発表。
夜9時。コの字型の長机。お誕生席の教授はまだ。
「教授今日いた?」「車なかったな」「うそ?てことは?」「カンファ来週?」「来週祭日」「っしゃ!2週間あったら・・」
なんのこともなく、普通に教授が登場。
『さ!レディゴ!』
シーンとなり、1人ずつ発表。上級医より。したがって、後になるほどプレッシャー。
「この前のシアトルの学会のそうです。サーキュレーションの」
『ああ、あれね?これがそう?ふふ』
「いえぁ」
この時点でほとんどのメンバーが理解できず、別次元を感じる。
「次。いいですか。ビトロ(試験管)で有意差・・でました。バラつきが多少」
『うん。まあいんじゃないの?』
「次はじゃあ、ビボ(生体)でやってよろしいですか?」
首を縦に振られ、自分だけ喜ぶ医師。
「ビトロで繰り返しましたが・・・」
別の医師、グラフは滅茶苦茶。
『これはなんだ?』
「あはははは」上級医師らのみ笑い。
『このグラフはあれだね。ヒューストンのほら』
「ジョンソンですね。あれは参りましたね!」
と、これまた上級医師と別次元会話。
『よし!君を日本のミスタージョンソンと名づけよう!』
「あっはははは!」と上級医師ら。
顔面紅潮し、次のいよいよ下級生へ。
「4つの群に分けてみました!」
『うん君さ。いきなりそう言ってもだよ。どの医師もみなアンノウンだよ。ignorant of。無知とか、無学という意味もあるのね。そこ、窓閉めて』
みな、下級生を見下ろす。
「ビトロでは!」
『タイガース勝った?うっそぉ?ほほほ、ええ?』
「ビトロでは!」
『うんもうビトロは分かったからさ。これでもうビトロ何度目よ?』
「えっ?まだ1回目です」
『こうしてるうちにタイムはフライしてるのね。で、結論は?ホワッツザポイント?』
「けっきょく、有意差は、みられませんでした」
『結局ってあなた言うけどね。差がなくってもそれはあくまで実験結果であってね。トラッシュデータじゃないのね』
「はい!」
『その実験のためにさ。高い薬剤を東大の先生から頂いてきたんだよね。それを結局ってさ。マルチブルに検討してさ。そしたらどっかで有意差でるかもしれないじゃない?単にグラフの比較じゃさ』
みな、首を縦に振る。しかし教授は不機嫌。
『もうちょっと、みな頑張らんとな。自分の実験ばかりせずに!わが医局はあくまでオールエイジ、オールマイティ!今度のカンファは・・・』
カレンダー。来週は祭日。
『祭日か・・・学会はたしかチャイナで・・・ん?チェン氏は・・・んん?』
みな、注目。
『あ、それは来月か。じゃ、次のカンファは祭日の23時からみっちり!オーケイ!』
上級生、あきらめ顔で起立。
真夏の暑い夜。
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