第6話 コベンジャーズ さらなる急襲!
2013年1月16日 連載真珠会病院の医局。夜遅くではあるが、多数の医局員らが会議に参加している。その白衣7人くらいに囲まれた院長:塩沢だけは、黒いスーツだ。
「以上が、諸君の業績だ。秋は病気そのものが減る時期とは言われるが、我々にはそのような言い訳は通じない」と、オーナーサイド的に説明。
ほかの医局員らは憔悴しきっていた。そのうちの1人の長身が、とうとうキレた。
「目標だというが。僕は先月、その目標の上を達成したはずだ。なのに」
「貴官の成績はと・・・・救急受け入れは横ばい。内視鏡、カテーテル件数がやや減少。病棟での重症加算を含めると、とんとんといったところか」
「とんとん・・・?じゃあ悪くない。先月の優秀な成績の横ばいなら、今月だって評価されるべきだろ!それをコストという形でだな!」
塩沢は手を横に振った。
「ならぬ。目標というのは常に流動的だ。オーナーの時価評価により内容が異なる。昨日は良くても今日がいいとは限らぬものだ。すべてはオーナーの意向。それ次第だ」
「給与も、上げる上げると言って、全然上がらんじゃないか!」
「その理由も同じく。しかもそれは私の範疇ではござらぬ。オーナーとの交渉を直接されたし。身をわきまえて臨むことだな」
「くっ・・・!」
(♪)
Realize 感じてる
移りゆく悲しみさえ
变わらない時の中で
記憶の海へといつか流れる
(閉まるエレベーター。階段を下りるユウに、EVで降りる女医2人)
二度と戻らないと
あきらめていた人と
思いもよらぬことで
また会えることがある
(疾走するユウに、両側から追いつく女医2人)
きっと同じ場所に
いられることだけを
信じていたから
(1・2・3・4ステップ)
Realize わかってるかってる(ジャンプ)
さだめなどありはしないはしない(足から飛行機雲)
变わらないわらない真実なら(たなびく白衣の両翼)
未来はいつでも变えられるもの(大勢)
(終)
塩沢はブルった携帯に出た。
「なにか。重要な会議中であるが」
『オーナーからけ、警告を食らったァ!』山形・・・副院長の声。
「患者の無理な搬出は、むしろそなたが自分で決めたこと。自己責任でお願いする」
『やつら、徹夜覚悟でやるのかな・・・?』
「いまさら、自信喪失とはな」
塩沢は別の端末でGPSを確認。
「サービスエリアでご休憩とは、変わった趣味があるものと見える」
『12台を送り出してこっちはもう・・・ネタがないんだ。回してくれ!』
塩沢、今度は医局内の電子掲示板を参照。
「私の計算では、なんとか深夜には十数名の補充が可能だが・・・オーナーのムラサキ氏が毎朝、日報を参照なさるのはご存じであろうな」
『ああ!だが・・・真田のスタッフは・・・何人送ろうといとも簡単に。だから。まだまだ足りん!』
「12人も送れば、疲弊さすには十分ではないのか」
(切)
「みなも心するがよい。つまらぬ自己欺瞞によって自らが崩壊してゆく様をな」
さっきの医局員が、ゴク・・・と唾を飲みこんだ。
「さ、ささ!さっきの態度は!じ、自分に問題が」
「それでよい。わが病院に無軌道な男は要らぬ。オーナーのおっしゃる通り、世界をモノにするほどの度量でなければ。虎視眈々と機会を狙うのだ」
「オーナーは・・ムラサキ理事の心境によっては中途ということも」別の医局員。彼らはベンチャラーに対する不信感があった。熱っぽくて冷めやすい。
「だから我々はいろいろと考えあぐねているのだ。理事、芸能人、役人・・・社会の道具には見せかけの活躍とアメを与えておけばよい。肝心なのは、その化学反応によって生まれる産物を我々がごっそり享受することなのだ」
「存続してもらわなければ・・・」
「そう。この国同様。我々の目的は赤字や黒字ではない。その組織の<存続>なのだ」
みな、頷いた。腕をクロス、会議は終了。
みな去っていく中、塩沢は携帯を3ケタ押した。
「警察・・・ですか。ちょっと面倒なことがありまして」
サービスエリアでは、黒いワゴンが1台ぽつんと停まっている。意味もないコーヒーを、ただ時間つぶしに山形が飲む。
「12台のあと、さらには・・ふひひ!おい!」
「はっ!」運転席のゲス男。
「24台、要請したか?」
「へい!院長が送るっておっしゃってました!」
「頼むぞ。塩沢!」
「ボス・・・24人も患者借りるとは、さすがすねえ・・・」
「そりゃあ、俺の権限だ。言うこときかん奴は葬る」
近く、会社帰りっぽい車が何台も近くを通り過ぎる。
「まあこれで奴らが診療拒否して、社会問題にでもすりゃ潰れるわな。あそこは」
「ま、医者も逃げるっしょ!」
「おいそれで。キャバは予約しとんだろな!キャバは!」
「へい!」
「最後は抜いて帰るからな。そこの予約も抜かりなしにな!」
「へいでゲス!」
彼らは・・いや、キャバ好きな多くは、そんなアフターで自己満足して帰宅する。
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