その頃の真田病院駐車場。僕と初老のやっさん。無理やり連れてきた。そこで僕の腕から・・・長い帯をやっさんの腰に巻いた。
「おいおい。そんなに俺が信用できんのか?」それでも初老のやっさんはパワーが有り余っているようにも思える。しかし僕はこいつの性格を知っている。臆病極まりない。外来も病棟も、もとはこいつのせいでかなり苦労してきた。
「やっさん。すみませんが、いちはやい救命を目指すため・・・敬語は省略します」
「フン。尊敬してないくせに」
僕ら2人は背中合わせになった。品川からのアナウンス。
<開かずの踏切が渋滞で、1台ずつの搬入となりそうです!>
「来たあれだ!やっさん!」挿管チューブを彼の背中の中に数本。
「いたっ!」
「DCは2台。要るときは掛け声で」
「こんな近くにいてか?」
「行くぞ!」
「うわっ!」
やっさんは引っ張られ、鈍足ながらついてきた。
1人目。脈もないDOAだ。右腰のアンビューを当てる。
「叩いても同じかくそ!DCスイッチ入れろ!」
「これか?」
「どけ!」
「なに?」チュイーン、と充電。
「DCやれ!俺は・・・」CV用の注射器。そけい部に刺し血液逆流。腹のポーチの注射液を注入。やっさんは何度かDCするが・・・
「ダメだ!」
「おい俺がするときに電気当てんな!しびれたぞ!」
「マッサージだな!」
「(無視)」背中よりビューン!と管が伸び・・・挿管。
2台目が到着。マッサージを別スタッフに。点滴は全開。
「気胸かな?」聴診。
「で、どうすんだ?」
「さっきの呼吸器、つながないか!」
「あ、ああ」別スタッフが用意した呼吸器を1人目につなぐ。
「モニター!」
「ブヒ!」と夜ナース。
2人目は画像検査へ。3・4台目が到着。僕ら2人は散りそうになり、そのまま中央へ引っ張られた。
「(2人)うわああ!」ゴツン、と頭打った。
「てて。でも相手がない頭だからマシか」
「なんだと!」
自分のテンションが止まらない。
「3人目は腹痛か。やっさん頼む」背中合わせに自分はもう1人。
「よし行け!」技師を呼びつけ、腹痛が検査へ。
「この4人目はいかんアンステーブルだ」心電図でSTかなり低下。
「テーブル?」
「バカ。不安定狭心症」
「ああ。不安定な狭心症か」と知ったかぶる。技師を呼び、カテ室へ。
「情報が何もない。患者本人は苦悶で話せないし・・・モルヒネ用意!いやまて血圧低い!」
「てめえこそ、何独り言言ってんだ!」
「でも役に立つ!」
5台目が容赦なしにハッチを開けた。
「こりゃ人手が・・・事務長の品川!聞こえるか!今すぐ来い!」
5人目。ものすごい高熱。
「ほかの医者はどうした!山崎は!ジュリアは!」
<残ってるドクターは、先生方だけです>と品川。アナウンスと同時に駆けつけた。
「非常勤の当直は!」
「ぼ、僕が呼んだ患者じゃないから関係ないって」
「ひきずって連れてこい!」
「ひっ!」
高熱は培養取り、検査へ。点滴あり。まだインフルの時期ではなかった。
6、7、8台目と・・次々に到着。
「6人目も挿管だ!」
「わしがやるのか?」やっさんは一歩引き僕の背中とぶつかった。
「俺は7・8人目!」ハサミを取り出し、やっさんの横で光った。
「そんなに憎いか?俺が?」
結んでいた帯をプチン、と切った。
「7人目・8人目は検査。おいナース!バイタル、モニター!」
「ブヒィ!」
気胸の写真。キットを取り出し、ひと声かけ麻酔メス挿入。
「止めとけ!マイナス5でいいわナース!」
「ブヒ!」
「引っ張んなよコラコラ!」
「すんません!」
「俺はカテ室!」
タタタ・・・と走りだし、一言だけそのナースへと振り向いた。
「俺に謝るな!患者に謝れ!」
久々のインパクトだった。
なあ、間宮・・・
俺たちは、確かに無茶をしているのかもしれない。だが以前戦ったライバルがこう言った。
「自分の成長は、確かな無茶の上にこそ成り立つものである」と。何が言いたいかって?
自らその不可能に、投げ出せ。
その頃間宮はすでに電車を降り・・・ばあちゃんの入所する高齢賃貸マンションへと向かっていった。
(♪)
遅い電車の ドアにもたれて
逃げる街の灯り見つめてた
がんばりすぎよ 仕事仲間の
心配顔 平気と笑って
毎日降りる駅を出て
ヒールの音がついてくる
ただなんでもないあの曲り角で
急に涙がこぼれた
Single Girl わたし 淋しかったんだ
自分でも気づかなかった
Single Girl わたし 泣きたかったんだ
正直にあなたの胸で
逢わないでいたら終わるって
信じてもないくせに
「おいおい。そんなに俺が信用できんのか?」それでも初老のやっさんはパワーが有り余っているようにも思える。しかし僕はこいつの性格を知っている。臆病極まりない。外来も病棟も、もとはこいつのせいでかなり苦労してきた。
「やっさん。すみませんが、いちはやい救命を目指すため・・・敬語は省略します」
「フン。尊敬してないくせに」
僕ら2人は背中合わせになった。品川からのアナウンス。
<開かずの踏切が渋滞で、1台ずつの搬入となりそうです!>
「来たあれだ!やっさん!」挿管チューブを彼の背中の中に数本。
「いたっ!」
「DCは2台。要るときは掛け声で」
「こんな近くにいてか?」
「行くぞ!」
「うわっ!」
やっさんは引っ張られ、鈍足ながらついてきた。
1人目。脈もないDOAだ。右腰のアンビューを当てる。
「叩いても同じかくそ!DCスイッチ入れろ!」
「これか?」
「どけ!」
「なに?」チュイーン、と充電。
「DCやれ!俺は・・・」CV用の注射器。そけい部に刺し血液逆流。腹のポーチの注射液を注入。やっさんは何度かDCするが・・・
「ダメだ!」
「おい俺がするときに電気当てんな!しびれたぞ!」
「マッサージだな!」
「(無視)」背中よりビューン!と管が伸び・・・挿管。
2台目が到着。マッサージを別スタッフに。点滴は全開。
「気胸かな?」聴診。
「で、どうすんだ?」
「さっきの呼吸器、つながないか!」
「あ、ああ」別スタッフが用意した呼吸器を1人目につなぐ。
「モニター!」
「ブヒ!」と夜ナース。
2人目は画像検査へ。3・4台目が到着。僕ら2人は散りそうになり、そのまま中央へ引っ張られた。
「(2人)うわああ!」ゴツン、と頭打った。
「てて。でも相手がない頭だからマシか」
「なんだと!」
自分のテンションが止まらない。
「3人目は腹痛か。やっさん頼む」背中合わせに自分はもう1人。
「よし行け!」技師を呼びつけ、腹痛が検査へ。
「この4人目はいかんアンステーブルだ」心電図でSTかなり低下。
「テーブル?」
「バカ。不安定狭心症」
「ああ。不安定な狭心症か」と知ったかぶる。技師を呼び、カテ室へ。
「情報が何もない。患者本人は苦悶で話せないし・・・モルヒネ用意!いやまて血圧低い!」
「てめえこそ、何独り言言ってんだ!」
「でも役に立つ!」
5台目が容赦なしにハッチを開けた。
「こりゃ人手が・・・事務長の品川!聞こえるか!今すぐ来い!」
5人目。ものすごい高熱。
「ほかの医者はどうした!山崎は!ジュリアは!」
<残ってるドクターは、先生方だけです>と品川。アナウンスと同時に駆けつけた。
「非常勤の当直は!」
「ぼ、僕が呼んだ患者じゃないから関係ないって」
「ひきずって連れてこい!」
「ひっ!」
高熱は培養取り、検査へ。点滴あり。まだインフルの時期ではなかった。
6、7、8台目と・・次々に到着。
「6人目も挿管だ!」
「わしがやるのか?」やっさんは一歩引き僕の背中とぶつかった。
「俺は7・8人目!」ハサミを取り出し、やっさんの横で光った。
「そんなに憎いか?俺が?」
結んでいた帯をプチン、と切った。
「7人目・8人目は検査。おいナース!バイタル、モニター!」
「ブヒィ!」
気胸の写真。キットを取り出し、ひと声かけ麻酔メス挿入。
「止めとけ!マイナス5でいいわナース!」
「ブヒ!」
「引っ張んなよコラコラ!」
「すんません!」
「俺はカテ室!」
タタタ・・・と走りだし、一言だけそのナースへと振り向いた。
「俺に謝るな!患者に謝れ!」
久々のインパクトだった。
なあ、間宮・・・
俺たちは、確かに無茶をしているのかもしれない。だが以前戦ったライバルがこう言った。
「自分の成長は、確かな無茶の上にこそ成り立つものである」と。何が言いたいかって?
自らその不可能に、投げ出せ。
その頃間宮はすでに電車を降り・・・ばあちゃんの入所する高齢賃貸マンションへと向かっていった。
(♪)
遅い電車の ドアにもたれて
逃げる街の灯り見つめてた
がんばりすぎよ 仕事仲間の
心配顔 平気と笑って
毎日降りる駅を出て
ヒールの音がついてくる
ただなんでもないあの曲り角で
急に涙がこぼれた
Single Girl わたし 淋しかったんだ
自分でも気づかなかった
Single Girl わたし 泣きたかったんだ
正直にあなたの胸で
逢わないでいたら終わるって
信じてもないくせに
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