深夜の真珠会病院、院長室の別室。ソファが向かい合い、オーナーのムラサキが2人に向かってふんぞりかえっている。
「ま、僕は<中継>を見に来ただけなんだけどねぇ・・・」
壁掛けモニターに、真田病院の全景。静寂で、救急車や人の出入りもない。
「院長は、結果出したってこと?」
「いえ。まさに出そうなところだったのですが・・」焦った様子の塩沢。
「僕が押しかけたんです」と、山崎が精悍な顔を上げた。
「契約を今さら撤回なんて、はは!」とムラサキ。
「この契約は、おかしい!」
パサ、とコピー数枚がテーブルの上に。
「オーナーさんがムラサキさんだと聞いて、資金が潤沢と解釈し僕は了承した。でも、仲介会社があったなんて」
「仲介?常識でしょ」ムラサキは、当時のIT企業家のような口ぶりだ。
「仲介業者の意向によって、僕の経営が左右されるなんて・・・だいいち、肉食業者がなんですか!医療に関係ない!」
「さすが、お医者さんは世間知らずだねえ。おい塩沢。コーヒー買ってこい。微糖な!」
塩沢は簡単にアゴで使われた。ムラサキは完全に見下し口調だ。
「関西で、幅を利かせる組織は大きく3つ。利権団体、食肉、宗教」
「ヤクザは?」
「そいつらがヤクザなんだよ。通常言うヤクザは事務所だ」
となると、ムラサキは宗教団体ということになる。それが、食肉に委託している。
「やだな山崎先生。契約書は、隅々まで読まないと」
「こんな分厚い本みたいなの。読めるか!」
「品川も、浅はかな奴だな」
品川事務長がわざとかどうか、ここでは問題ではなかった。山崎は頭に血が昇っていた。
「いやだ。いやだ。早速、解約に入りたい」
「無意味!」
「なに?」
「君はもう、実印を押している。代わりが見つからない以上、君に全責任がある」
「代わりだと?」
「病院組織というのは、それで成り立っているんだ。何も知らないんだな。朝のリレーっていう文、小学生で習っただろ?」
http://www.geocities.jp/habane8/London/f_07.htm
山崎は思い出した。
「なんて幼稚な。全世界が、自転で朝をリレーするというあれか?」
「そ!あれが神髄だ!責任の所在を、先代が後代へと回していく!俺たちはまさしく、朝のリレーのランナーだ!」
塩沢はコーヒーを開け、ポンと3本置いた。ムラサキは腰に手を当てた。
「たた・・・またブロック、してもらわんとな」
「ブロック?」と山崎。
「整形に診てもらってんだがな。あの医者頼りない。代えてもらう!こいつもリレー終了だ!」
「何言ってんだ。あんたの病気は」
そこは、塩沢が遮った。
「空が心なしか、明るい。そろそろ攻撃再開をしませんと」
「フン。奴らがギブアップするとは、到底思えんがな」とムラサキ。
「ダンが出勤してくるまでに、疲労の極致にまで追いつめないと」
「マスコミによる叩きで、病院は名実ともに沈没か。なるほど。新しい。悪くない」
「ヘリは朝6時の出動です」
ムラサキは立ち上がって、手洗い。
「まあ山崎くん。契約のことは今、気づいたようなことを言ってるが。本当は・・」
「な。なんですか!」
「仲間への休息を与えるための、芝居と違うかな?」
「なにっ・・・」
ムラサキは高笑いをしながら、ドアを開けて出て行った。山崎が携帯を見ると、何度も着信が入っている。
「やっさん。療養型病院の院長がなぜ・・・」プッシュ。
「よお!ルーキー!」
「こんな夜中に。どうしたんです?」
「いや、うちの患者が悪化してな。お前に電話したら出ないんで、事務当直に聞いたんだ。なんでオーナーに会ってんだ?」
「・・・・」
「わしに隠れて、なにか打算でもあるまいな?」
じじい医者ながら、いやだからこそこのヤッサン医師は疑い深かった。お互い、同時に実印を押した仲である。
「打算なんて。ありません」
「いやいや。お前の契約にはいささかミスがあったようだな。噂で聞いた」
「いえ。いいんです・・・」
「俺は、きちんと隅々まで読んだからな。へへ」
「僕は、医療をやるだけです」
結果は、後からついてくる。と言わんばかりに・・・。
ムラサキの指摘通り、時間稼ぎをした山崎は駐車場の車に乗り込んだ。
「・・・・・せっかく、やっと主人公になれたんだ。この機を逃すか!大阪最大の病院にして、奴らを駆除してやる!」
その一方、どこか寂しげな一抹がよぎった。その落胆の落差といったら・・・。
「ユウ。マミ。頑張れよ・・・あと少しだ。俺はもう・・・」
ブウン
ギュルギュルルル!
なぁ、山崎。
これから、お前のことに関して・・・非常につらいことを書かなくてはいけない。ただ、山崎。
あとで女医らが指摘していたように。この時点でお前の精神状態に気づいた者が、果たしていたかどうか・・・。
「ま、僕は<中継>を見に来ただけなんだけどねぇ・・・」
壁掛けモニターに、真田病院の全景。静寂で、救急車や人の出入りもない。
「院長は、結果出したってこと?」
「いえ。まさに出そうなところだったのですが・・」焦った様子の塩沢。
「僕が押しかけたんです」と、山崎が精悍な顔を上げた。
「契約を今さら撤回なんて、はは!」とムラサキ。
「この契約は、おかしい!」
パサ、とコピー数枚がテーブルの上に。
「オーナーさんがムラサキさんだと聞いて、資金が潤沢と解釈し僕は了承した。でも、仲介会社があったなんて」
「仲介?常識でしょ」ムラサキは、当時のIT企業家のような口ぶりだ。
「仲介業者の意向によって、僕の経営が左右されるなんて・・・だいいち、肉食業者がなんですか!医療に関係ない!」
「さすが、お医者さんは世間知らずだねえ。おい塩沢。コーヒー買ってこい。微糖な!」
塩沢は簡単にアゴで使われた。ムラサキは完全に見下し口調だ。
「関西で、幅を利かせる組織は大きく3つ。利権団体、食肉、宗教」
「ヤクザは?」
「そいつらがヤクザなんだよ。通常言うヤクザは事務所だ」
となると、ムラサキは宗教団体ということになる。それが、食肉に委託している。
「やだな山崎先生。契約書は、隅々まで読まないと」
「こんな分厚い本みたいなの。読めるか!」
「品川も、浅はかな奴だな」
品川事務長がわざとかどうか、ここでは問題ではなかった。山崎は頭に血が昇っていた。
「いやだ。いやだ。早速、解約に入りたい」
「無意味!」
「なに?」
「君はもう、実印を押している。代わりが見つからない以上、君に全責任がある」
「代わりだと?」
「病院組織というのは、それで成り立っているんだ。何も知らないんだな。朝のリレーっていう文、小学生で習っただろ?」
http://www.geocities.jp/habane8/London/f_07.htm
山崎は思い出した。
「なんて幼稚な。全世界が、自転で朝をリレーするというあれか?」
「そ!あれが神髄だ!責任の所在を、先代が後代へと回していく!俺たちはまさしく、朝のリレーのランナーだ!」
塩沢はコーヒーを開け、ポンと3本置いた。ムラサキは腰に手を当てた。
「たた・・・またブロック、してもらわんとな」
「ブロック?」と山崎。
「整形に診てもらってんだがな。あの医者頼りない。代えてもらう!こいつもリレー終了だ!」
「何言ってんだ。あんたの病気は」
そこは、塩沢が遮った。
「空が心なしか、明るい。そろそろ攻撃再開をしませんと」
「フン。奴らがギブアップするとは、到底思えんがな」とムラサキ。
「ダンが出勤してくるまでに、疲労の極致にまで追いつめないと」
「マスコミによる叩きで、病院は名実ともに沈没か。なるほど。新しい。悪くない」
「ヘリは朝6時の出動です」
ムラサキは立ち上がって、手洗い。
「まあ山崎くん。契約のことは今、気づいたようなことを言ってるが。本当は・・」
「な。なんですか!」
「仲間への休息を与えるための、芝居と違うかな?」
「なにっ・・・」
ムラサキは高笑いをしながら、ドアを開けて出て行った。山崎が携帯を見ると、何度も着信が入っている。
「やっさん。療養型病院の院長がなぜ・・・」プッシュ。
「よお!ルーキー!」
「こんな夜中に。どうしたんです?」
「いや、うちの患者が悪化してな。お前に電話したら出ないんで、事務当直に聞いたんだ。なんでオーナーに会ってんだ?」
「・・・・」
「わしに隠れて、なにか打算でもあるまいな?」
じじい医者ながら、いやだからこそこのヤッサン医師は疑い深かった。お互い、同時に実印を押した仲である。
「打算なんて。ありません」
「いやいや。お前の契約にはいささかミスがあったようだな。噂で聞いた」
「いえ。いいんです・・・」
「俺は、きちんと隅々まで読んだからな。へへ」
「僕は、医療をやるだけです」
結果は、後からついてくる。と言わんばかりに・・・。
ムラサキの指摘通り、時間稼ぎをした山崎は駐車場の車に乗り込んだ。
「・・・・・せっかく、やっと主人公になれたんだ。この機を逃すか!大阪最大の病院にして、奴らを駆除してやる!」
その一方、どこか寂しげな一抹がよぎった。その落胆の落差といったら・・・。
「ユウ。マミ。頑張れよ・・・あと少しだ。俺はもう・・・」
ブウン
ギュルギュルルル!
なぁ、山崎。
これから、お前のことに関して・・・非常につらいことを書かなくてはいけない。ただ、山崎。
あとで女医らが指摘していたように。この時点でお前の精神状態に気づいた者が、果たしていたかどうか・・・。
コメント