本作にも登場する、病院経営者。経営者のスタイルは10年前と比べるとかなり変わってきている。大阪の印象だけで言えば、臨床経験を片手に乗り込み病院を立ち上げ確立した<1世>世代、これがみな今高齢化、あるいは引退してきている。
いま<2世>がその流れを継ぎつつある。2世と言っても年齢は様々だが、たいていは成功した1世の遺産を借金ごと背負うわけだから、気持ちの持ちようによっては相当なプレッシャーだ。資金繰りのために良い業績を<作る>必要があり、正直現場の揉め事には立ち入りたくない。
この現場への不干渉が第2世代の特徴だ。病院にとどまらず、社会全体がそういった構造だ。経営者が雲の上の人になることで、末端すべてを無力化できる。資本主義の仮面を被った共産主義だ。
ただ経営者の横にはイエスマンと呼ばれる側近がおり、命令に絶対服従するのが条件だ。そのため経営者の性格は、だんだん独裁者的になる。
僕らはつい一方的にそういった人種を非難してしまうが、そうなった人間にはそれなりの理由、背景、過程が存在するものだ。むしろ、興味深い人種と言える。
もしアベノミクスがあのまま続いていたら・・・?傲慢な人間が、いや傲慢になる人間がどれだけ増えただろう。傲慢な経営者と同じく、結果のみを求める人間で埋まるだろう。常日頃現実と戦ってないと、いくらでも楽な方へと転がっていく。
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