(手前へ歩行)私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん。ただのセールスマンじゃございません。私の取り扱う品物はこころ!人間の心でございます。ホーホッホッ…


 音楽と嘲笑?テレレーッ!テッ!テレーーーーーッ!


 (高層ビル群)この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかりそんな皆さんの心のスキマをお埋め致しますいいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。さて、今日のお客様は…

 キン!33歳男性医師。勤務医。

 (タイトル)お~っほっほっほ・・・ <朱に交われば>


 33歳の男性勤務医は、今日もパチンコで負けた帰り道。
「くっそ~!病院の給料、上げてもらわなきゃな!」

 次の日、院長室。
「十分な報酬は払ってるだろ君?」眉間にしわ寄せる院長。
「院長。自分はここで働いてもう30年。がむしゃらにやってきたのに昇給もない。なんでも退職金もないって話じゃないですか!」

 事務員らがヒソヒソ話。
「あんなお金に固執しなかったのに。見損なったわ・・・」

 勤務医の自宅。畳の上にラーメンの殻など残骸。
「くそーっ!なんとか楽して儲かる病院はねぇのかよ!」と、ドアがコンコン。

 出るとそこにせぇるすまん。

「わたくし、こういうものでして」
「・・・セールスマン?」
「おおっほっほ。勤務医なのに、私生活は荒れ気味ですなぁ。生活が困窮しているのも仕方がない。ギャンブルに興じるあまり、身内にも見限られ・・」

「どっどっ。どうしてそんなことまで?」
「おおっほっほ」

(魔の巣。のび太みたいなバーテン)

「開業したくてもね。資金が必要でしょう?ローンも信用で組めないし」
「それはお任せくださひぃ。わたくしが開業先を用意してあげましょう」
「だからといって、セールスには騙されませんよ?」
「おおっほっほ。心配いりません。お金は一銭もいただきません。費用はタダ!」
「ええっ?本当に?でもそんな勇気は」

指差される。

「あなたは楽な生活を願ったそれをわたくしが手助けするのですもうこれまでのむなしい生活とはオサラバですあなたは明日から開業する一国の主なのです!」

 だああああああーーーーーーーーっ!

 ぎゃあああああーーーーーーーーー!

(次の日)

「そんな君!」院長が血相を変える。
「本日付けで辞めます」
「残した患者たちはどうする?」
バタン、と出ていく。

 駅の近くのビル。
「このビル丸ごとなんて。信用していいのかなぁ・・・」

 1Fに入ったとたん。
「(美女軍団)おめでとーございまーす!」
「ええっ?」

 受付、ナース、リハビリいずれも若い美女たち。
「先生ン。お茶入りましたわよンン」「はは、はいっ!」
「先生ン。ここ診てくださるン?」「かかっ!患者さんまで!」
「先生ン。こっちで遊びましょうン?」「うわわっ!」
取り合いになる。

「うははっ!うははっ!はぁ~!」酒びたりになり、やがて視野がぼやけてくる。指で何か紙を押さえたような。

(次の日)

 気がつくと、部屋はもぬけの殻。
「あれ?みんな・・・どこ行ったんだ?」

 コンコン、とやってきた不動産屋。
「ちょっと!」
「あんだよ?ここは俺の病院だぞ!」

 書類を渡される。
「あんたのオーナーが、今日でここを売り払うってよ。なので出てってもらおうか。昨日あんたんとこに持っていった3千万も返してよ!」
「しっ?しし、知らない!」
「あんたが昨日押したハンコだよ。増築のための。計画はパーになったから貸した金は返してもらう。さ、払え!」

「で、でもそんな金・・・」
「返せんなら、あれだぞ!」

 ボオオー!と近くの海にやってくるマグロ漁船。
医師の脳裏に浮かぶ、美女軍団の札束室内ばらまき。
「きゃああっはっははは!」
朱肉のついた人差し指で腕を伸ばし、スカートを覗く医師。
「うへぇえええ・・・」

(回想終わり)

「ぎゃああああああああ!」

 ビルの下、せぇるすまん。

「これからは医師という飾りも外され、1人の男としての真の価値が試されることでしょう。マグロ1匹1匹釣り上げることによって、1本釣りされたい医師の気持ちも分かることでしょうおお~っほっほ!」

(後姿)



 計画倒産、の1症例です。





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