つづき

2015年3月4日 連載
○ 骨髄増殖性腫瘍の治療

 1系統以上の骨髄系細胞が自立増殖する。このうち真性多血症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症は相互に病型移行がある。髄外造血に伴う肝脾腫、骨髄の異型巨核球の増加、JAK2、CALR1の変異が高頻度。このうち前2者は生命予後が良好なものの、合併する血栓症が問題。60歳超や血栓症既往ありでは低用量アスピリン+hydroxycarbamide(HU)を用いた細胞減少療法を行う。一方、予後が不良である原発性骨髄線維症では、その予後予測が重要。予後不良な群である65歳以上、全身症状持続、ヘモグロビン<10、白血球>25000、末梢血での芽球1%以上、は同種造血幹細胞移植を念頭に治療。移植は半数以上に線維化の消失あり、期待できる。

○ パーソナルゲノム情報による脳疾患の発症機構の解明

 個人の全ゲノム解読が可能になったため、神経疾患の背景遺伝の要因が解明されてきた。他系統委縮症ではCOQ2が特定。これはコエンザイムQ10の生合成系の酵素の1つをコードしている。これの変異でQ10の合成が低下する。

○ 膠原病治療におけるステロイドの使い方

 関節リウマチに対してプレドニゾロン5-10mg/日の投与が関節破壊の進行を抑制することなど、効果面は十分知られているものの、高容量のエビデンスや長期予後に関してはあまりエビデンスがない。

○ 呼吸と循環の接点:肺高血圧症

 呼吸器疾患だとついそれだけ診がちだが、2次的な心臓への負担は軽視しがち。超音波で定量的な評価が簡単にできるが、画像で肺動脈の太さなど見る習慣も必要。

○ 重症筋無力症の最近の治療

 神経→筋肉への伝導に関する受容体、蛋白質などが自己抗体によって障害される。ステロイドなど治療の種類は豊富だが、それでも完全寛解は10%以下。なるべく早期治療を行い、慢性期にはプレドニゾロン少量へもっていき、後続の合併症を避ける。

○TMA:HUSとatypical HUS

 TMA=血栓性微小血管症にはTTP、病原性大腸菌の血性下痢で被害者の出た溶血性尿毒症症候群=HUSがあり、それ以外をatypical HUS(広義)とよぶ。狭義HUSは中でも補体系の異常な活性化による血管内皮障害に起因するもの。HUSは保存的治療、TTPは血漿療法が有効、狭義HUSでは補体系をターゲットの多彩な治療となる。

○ 自己炎症症候群の診断と治療

 全身の炎症をきたし、病原体が検出されず自己免疫反応にも乏しい。獲得免疫でなく、それ以前の自然免疫の役割が大きく、診断は遺伝子レベルで行うことになる。治療も各疾患遺伝子により異なる。最近抗IL-1製剤の有効性が指摘。

○ 骨髄異形成症候群の診断と新たな治療

 無効造血(骨髄は過形成なのに末梢血の血球減少)と白血病化の2本柱。診断は2008年の診断基準を用いる。遺伝子による診断はまだ実用化されてない。治療は低・高リスク群に分ける。現状で、予後改善を証明しているのはメチル化阻害薬のみ。

○ 潰瘍性大腸炎の治療の進歩

 2009年から導入のタクロリムス、2種のTNF-α阻害剤、intensiveCAPにより難治例の治療が進歩。最近ではCF下で生検組織から大腸上皮幹細胞を増やし移植する、という再生医療の試みも。

○ CTを用いた冠動脈造影法の展開

 冠動脈CTが普及。心臓カテーテル検査まで行うかどうかの判断に重要だが過信は禁物。



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