独身の時は、民間病院が一軒家を用意してくれたが、あくまでも一部の町立~病院、市立~病院での話だ。中にはまあまあな規模の団地が病院敷地に並び、医師公舎とか呼ばれる。病院の敷地内だから、当直時でもそこで寝泊り可能、というメリットはある。しかし実際は、すべての生活がそこに晒されるということに他ならない。つまりプライベートがない。独身なら車で逃避、ということはできるが、今の自分のように既婚となるとそうも行かず。
比較的新婚が越してくると、自然と新婚世帯との付き合いが多くなる。この場合、妻同士が親密であることが条件になる。妻同士らは専業主婦が多く、昼間はマダム会を開くようになり、医師らもやがて巻き込まれる。マダム会も大きくなると上層部の婦人を呼ばないといけないような雰囲気になり、まるで白い巨塔のような婦人会と化す。各夫人はそこでの話題を医師宅へ持ち帰り、あるいは耳寄り話をそこへ持ってくる。そして、あの人はこうだ実はああだと盛り上がってくる。
こういった世界ができてくると、夫婦の世界がもうそこ中心で回りだす。あの家庭は年収がどうとか、子供がどうだとか低い次元の会話になりがち。夫の行動半径も狭くなり、同じ公舎内を行き来する友人・家族関係に。慣れればそれも悪くはないが、気を付けてもらいたいのが<自治会長>という役回り。これが意外と盲点だ。ゴミだしや治安、非常識世帯への注意など、心を折る機会が多くなる。まるでうるさいクラスの学級委員だ。
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