06月01日付 朝日新聞の報道「イレッサ副作用死、706人に 厚労省が答弁書」へのコメント:

 厚生労働省は1日、肺がんの抗がん剤「ゲフィチニブ(商品名イレッサ)」について、02年7月の販売開始から今年3月末までに国内で1797人の副作用が製造販売元のアストラゼネカ社に報告され、706人が急性の肺障害で死亡したと公表した。小池晃参院議員(共産)の質問主意書への答弁書で明らかにした。
 この1年では、166人の新たな副作用報告があり、死亡は63人。死者数は減少傾向にあり、厚労省安全対策課は「重大な副作用を念頭に置いた慎重な投薬が現場で浸透してきた」とみている。

・・・とある。


 厚生省にはかなり不信感があり、彼らのイレッサへのこだわりも(タミフル同様に)以前からハンパではない。

 ただ、自分はタミフルそのものは非難しない。肺癌の化学療法をここ10数年見て、飛躍的な進歩があるとは言えない中(良いデータもあるが自己満足的)、本剤の登場が画期的であったことは確かだ。ただし適応は慎重に考える必要はあるし、患者側にはそれなりの同意もいる。

 ただ、この厚生省の出すたびのコメント、態度が気に入らない。単に投与が控えられての少ない副作用数かもしれんのに、(しかも死者はまだ多いのに)「副作用を念頭に置いた慎重な投薬が現場で浸透してきた」といういかにも短絡的な解釈・表現が許せない。

 ここで愚痴を言ってもしょうがないが、厚生省のみならず今は学会の言うことさえ、鵜呑みにできない時代になってきたと思う(違った考察の仕方が必要)。

 具体的に述べたいが、AK-47で狙われたらいかんので、小出しにそれとなく記載していきたい。
 最近はCM戦略があからさまで、番組で芸能人が自分の趣味と称して商品を紹介したり、ドラマではやたらモノが登場するし、記者会見では過激な発言で目立とうとするし・・・。ま、こういうのは以前からだし、そういう世界だからいいとして。とにかくスポンサーの力は、最近特に凄い。

 覚えてる人はいるだろうか?昔(10年くらい前?)、毎週人気のスペシャル番組で病院の特番が組まれ、研修医の働きぶりが紹介された(生放送)。そこで泉谷しげるが研修医をバカにした発言が出て、その直後番組自体が打ち切りになるという事態があった(その場で司会が最終回通告)。問題視したスポンサーが撤退した結果である。

 さて映画で気になるのは、ソニー・ピクチャーズの作品。どうもこの会社が関係する作品はソニー製品がやたら登場して鼻につく。確か「バッドボーイズ」で「スリー・リバーズ」のシーンを引用し初めてからだろうか。その後パート2ではソニー製品会場?のようなものまで登場。

 この007の傑作でも<バイオ>がこれ見よがしのアングルで登場。今後はQなる人物が登場でもして、ソニー製品をデモするのだろうか?「スパイウェア」とかね。

 ブルーレイの出来も上の下といったところで、アマゾンの評も出来すぎの感がある(みんな表現うますぎ)。

 医療の世界ではやってはならないことだが、MRがたまに一線を越えて(接待など利用して)特定の薬剤を勧めに来る。でも最近は旧製品を再宣伝するよう指導されてる会社が多く、どうやってアピールすべきか困ってるMRが多い。

 接待で効果があるとすれば・・・

 <ボンドガール>なら間違いない。

「これはこれは医学生のみなさん。地元大学で奨学金をお渡しする代わりに、卒業後もここで働いてもらいますぞ」
「なるほど。では私が危険でルーズな人間で社長出勤でセクハラ大魔王でも、ずっとこの地域のどこかで雇って頂けるわけだな?」
「う?それは・・・あなたのお名前は?」
「ボン。ジェームズボン。私はずっとこのマチに・・マチーニ、シェイクして!」
「うぬぬ!た、ただしボンドガールは地元で調達を!」
「よ〜めに〜・・こないか〜・・・」

 地元の就職を前提で頑張る人は、それ(恋愛・結婚相手)も大事な因子であることも考えておこう。

「田舎には、出会いがないのだ」(シャア調)
 一部の地域では、開業医による夜間(深夜)診療の輪番制が始まっているようだ。確かに最近、軽症でも夜間に大病院に受診する患者が増してきた。当直側のスタッフからすると、「なんで今の時間に・・」と言いたくもなるのは確かだが。

 これには患者側にデリカシーがないという問題もあるだろうが、患者・家族の仕事先が実は融通効かずで(なかなか休めない。翌日も絶対出勤)、結局夜間にしか病院に行けない(行かざるをえない)という背景もある。

 だからもっと身近な開業医で診てくれるのは、誰にとってもありがたいことだ。ただ開業医というのはどうしても経営面重視であるので、(普段でも)料金が高いと思ったら内訳を説明してもらう必要がある。

 それにしても開業医で深夜の診療となると、その時間帯の事務員・ナースを確保するのが大変だろうなと思う。彼らも生活をある程度犠牲にして(子供の面倒を任せたり)働いているわけだ。患者側も「夜分遅くにすみません」という態度が必要だ。
 
 まずい料理が出たからといって、ウエイトレスに八つ当たりしてもしようがない。だが実際、こういう大人が増えているのだ。
 決定的なネタばれあり。要注意。

実話に基づくストーリー。悪魔払いで悪魔を追い出そうとしたその結果、少女は死に追いやられてしまう。医学治療に専念せず悪魔払いに徹したための死か、それとも悪魔払いによってしても救えなかった命なのか。

 この話をもっと身近な医療に置き換えればかなり考えさせられる。具体的には<悪魔払い>→<常識的にはしない、しかし患者が望んだ治療(たとえばエビデンスなしの民間療法的治療)>。

 これを基にすると、「病気に打つ手なしの患者は、その医師の治療法を信じて病気と正面から闘うことを決意した」。そして最後の治療に共に賭けた。しかし助かることはなかった。確かに医師のした治療は法的に問題があった。だが何よりも真実は「患者を救おうとした医師のその熱意」であったのだ。

 そう置き換えて観れば、かなり考えさせられる作品。

 でもこれ、ソニー・ピクチャーズじゃないか!でも<バイオ>は映ってなかったな。

 

波紋

2007年6月5日 趣味
 
 「開業医ってええなあ」とつい口走ったのがあちこち噂を呼び、訂正にすごく時間がかかったことを覚えている。

 そのときの反響。

 一般的にも当てはまるリアクションだと思う。

● 院長より
「あんねえ。先生。開業は今はあまりもうからんよ。銀行もそう金は貸してくれへんし。うちにおりいな!」
 ※ それは5年くらい前の話で、今は銀行はむしろ積極的。1千5百万くらいまでは何とかなることが多いという。

● 一部ナース
「先生。よろしければ場所など詳細を。ただし内密で」
 ※ 要するに、病院を辞めて楽に転職したい輩が多いのである。彼らは群れでやってくる!

● 業者(卸やMRなど)
「先生。すべて私たちがサポートいたします!金銭面もお任せください!で、いつごろに・・・?」
 ※ 彼らが大前提で勧めてくるのが電子カルテ。かなりの利益になるためだ(要注意)。

 病院経営者は別として、このようにハイエナどもが群がってくる。その顔はすべて共通してハートマーク(目を見開き、気がありそうな顔)である。

 病院というのはけっこう狭い世界で、つい出た一言が大騒動にまで発展する。それこそ「口は災いのもと」なのである。口数の多い人は特に気をつけよう。
 

梅雨

2007年6月6日 趣味
 「マトリックス」のスミスでおなじみの、<大塚芳忠>が見逃せない。バラエティ番組でもその渋い声が聞かれることが多々ある。

 彼の調子を真似して、ちょっと喋ってみよう。

 さぁて気になる梅雨そうツユは大阪では今週かと思われていた。のだがさていやいや来週に持ち越しそうな雰囲気だ問題はそのツユではないソウメンのツユでもない本当の問題は・・(間)・・そう梅雨が明けてからだ明ければもう7月そうその時期は感染症がいや血栓症がいやはたまた全ての病気が・・(間)・・増えるそうだ増えるとも平和ボケした病院がまたベッド不足に追い込まれるしかし毎度の話だそれなのになぜ対応しきれない病院なのだでぇも君は実は以前から気分が悪かったでも昼の外来に受診しなかった。で耐えた耐えたぬいたそして病院へひとっ飛び!・・(間)・・そしてけぇっきょく夜中に起こされたこの当直医の私がかぁしかしかまわんよぉかまわんさ追加料金頂けばいいだから起こせよさぁ起こせぇさぁ起こせぇ(←ダミ声っぽく)!

 ・・やはりスミスのイメージが強い。
 今さらだが、最近まで<音楽ダウンロードサービス>をバカ正直に利用して浪費癖がついていた。今は自力で辿り着いたサイトでいろいろ聴いている。

 http://btiofuiw.alink2.uic.to/

http://www.jmp3.net/newcds.htm

 タダとなると、古い曲のほうに目が行く。中でも「郷ひろみ」!上司が(ナースらにふられたあとで)よく歌っていた。

 最近の曲がうるさく感じるようになったら、いろいろ探してみるといい。
 経営者の考えは革新的であったとは思うが、組織があまりに巨大になりすぎた。

 介護の仕事人たちは予期できるわけもないが、今の経営者というのは組織が巨大になると何故か<心が引退>してしまって、あとは金サイクルを転がすことに専念する。

 つまり他人任せで(つまり自身の手は汚さない)ブラックなシステムを構築してしまえば、黙ってても金が流れてくる仕組み。

 その強引な手段はまずかった。事務上の<テクニック>もある程度必要なときもあるのだが、いったん要領を得てしまえば、その欲のスケールは犯罪級にまで膨らむばかりである。

 さて、非難はこれくらいにして、この会社の黄金律である<グッドウィル・グループ十訓>を見直してみよう。

一、お客様の立場にたて、究極の満足を与えよ
一、夢と志を持ち、常にチャレンジせよ
一、困難の先に栄光がある、逆境を乗り越えよ
一、物事の本質を見抜け、雑音に動じるな
一、原因があるから結果がある、公正に判断せよ
一、積極果敢に攻めよ、守りは負けの始まりなり
一、スピードは力なり、変化をチャンスと思え
一、自信を持て、謙虚さと思いやりを持て
一、笑顔と共に明るくあれ
一、正しくないことをするな、常に正しい方を選べ

なかなかいいことを言う。

自分は医学的に生かすため、次のように解釈した。

一、患者様・家族の立場にたて、あくまで完全寛解につとめよ!
一、夢と志を持ち、常に新しいテーマにチャレンジせよ(院生?)
一、困難の先に栄光がある、逆境を乗り越えよ(つまりあきらめるな!)
一、物事の本質を見抜け、雑音に動じるな(保険適応やガイドライン、偏見などに捉われない!)
一、原因があるから病気がある、公正に鑑別・除外診断せよ(不明熱などのとき特に)※ 原因がない病気もありますが
一、積極果敢に病気を攻めよ、守りは負けの始まりなり(やたら経過観察するな!)
一、スピードは力なり、変化をチャンスと思え(逆境こそ真価が試される!)
一、自信を持て、謙虚さと思いやりを持て(患者の前でおじけずくな!)
一、笑顔と共に明るくあれ(包容力ある主治医であれ!)
一、正しくないことをするな、常に正しい方を選べ(客観性から外れずオープンにいけ!)

「分かったら、全員整列!」

(一同)サー!イエッサー!

<マラソン>

「ホーチミイーズザサノバビーチ!」
「(一同)ホーチミイーズザサノバビーチ!」
「おれによし!」
「(一同)おれによし!」
「おまえによし!」
「(一同)おまえによし!」

前列を横目でなぞる軍曹。

「デブ!お前は今や奇跡的に生まれ変わった!」
「サー!イエッサー!」

 そういや今日、キューブリックの映画(2001年宇宙の旅)あったな・・・。
 バブル期にできた中古マンションは別として、今になってどんどんメッキがはがれている今日。当時は新品でも、管理は人間。コースター、建築物、果ては年金の管理までほったらかしにされている。次は何だ?

 歴史の教科書を読むと、立派な建築物・資料は頑なに守られてはいるものの、大多数の民衆の主張らしき内容はほとんど残されていない。

「・・・は○○に即位し、○○を授けられた」(当時の市民ウケが不明)
「・・・各地で食物不足となり、百姓一揆が起こって何万人もの死者を出した」(役人どもはどうしてたのか?)

 「ブレイブ・ハート」の一節にあるが、
<歴史は常に葬った側の記録で作られる>。

 過去は過去として、未来はどうなるのか。医療は進歩、長寿は達成できているようだが・・・。国がこうもあれこれ強引政策・不祥事を出してきては、未来が不安になる。

 私の予想する、しかしありえない未来はこうだ。

 205X年。格差社会は進行するもメディアが取り上げず、ニュースの関心は北との戦争ばかりだった。戦争特需のため企業の景気は上向いたものの、若者たちは国による交換条件(生活保障)のもと、次々と戦場に送り出されていた。

 そんな戦争中ではあるが、私ジェームズ・ボン先生(50代)はその役職・持病(成人病)から兵役から逃れ、市民からは冷ややかな目でみられていた。

 しかし妙な事件が続いてた。クリニック単独勤務の医者が、次々と謎の死を遂げていた。内視鏡検査担当の医者がだ。患者もいなかったという。

 さて今日も、クリニックで<内視鏡>の検査だ。鉄筋2階クリニックの雇われドクターである。指紋認証で中へ。入ると音声が天井から聞こえる。

<おはようございます。ジェームズ・ボン先生>
「おはよう、Q。で、今日の内視鏡は・・」
<今日は1件だけです>

「1件?少ないですね?」
<開始まであと5分。席についてください>
「おいおい焦るな。患者はまだ来てない」

診察室に入ると、周囲4方向にドスン、ドスンと上から下へシャッターが降りた。

「密閉するのか?」
<ボン先生。やっぱり先生はボンボンですね>
「辞めても?」

<ボン先生。今日の患者は(あなた)です>
「僕のワイフのつもりか?」
<本日予定の、血管内・内視鏡カプセル検査。患者はボン先生>
「なにい?」

 たちまち状況を理解し、ボン先生はゲームセンター用のような座席(静脈用)を見下ろす。右にもう1つ(動脈用)ある。

<昨日、健康診断の際に・・覚えてませんかボン先生>
「いや・・・」

<静脈採血をたしか足から>
「ああ。腕は採取しにくいって、足から血を採られた」

<ボン先生の静脈内に、カプセルを注入しました>
太ももを思わず両方触るが、感触を感じるわけがない。

クリニックのレントゲン室で、自分を透視。右脚・・膝上のあたりに何か小さく見える。

「くそ!何をしたんだQ!」
<ボン先生。こうしてる間にも、カプセルはじわじわと心臓へ向かいます。助かる方法は1つ。いつものようにコントロールマシンに乗り、カプセルを安全なところへ運ぶこと>

「しかし!私の体は動脈硬化でいっぱいだ!いつもやってる患者は健康体で、それであってこその内視鏡カプセル・ツアーなのに!(男塾的、説明文)」

 ジェームズ・ボンは酒の飲みすぎ・煙草の吸いすぎで検診で引っ掛かりまくっていた。

<モタモタしてると爆弾が爆発しますよ。ボン先生>
「なんだと?」
<急いでください。ボン先生。ブチッ>

慌ててさきほどの椅子にまたがり、正面・両サイドのディスプレイをつける。
「なあに。いつも通りに操縦してればいい!」

 画面、ゆっくりとした静脈内の流れ。別画面では、腸骨静脈合流部の直前。
 流れに押され、壁にぶつかった。
「しまった!ここは以前、交通事故で手術したところだが・・・!」

『ケツエキノ、モレハナシ』アナウンスが入る。

途中迷い、行き止まり。腎静脈にいる。超音波ビームでスキャン。
「なるほど結石か。時々痛いと思った。センキュー!」
超音波で粉砕。
「こんなことしてる暇はない!」

 肝臓へ。いきなり大食細胞という巨大細胞に行く手を阻まれる。サイトカイン様物質を放射し、シールドで固めて寄せ付けず。

『カンサイボウセイケン、エンショウショケンチョメイ』
「どうせアルコール性肝炎だよ・・」

 次々とぶつかってくる大食細胞。カプセルを敵とみなして襲ってくる。

「くそ!お前も自分のくせに!」
なんとか追撃をかわし、下大静脈へ。

「心臓の入り口か!うっ?」

『コウホウヨリ、ケッセン、タシュウ、ライシュウ』

 血栓が下肢方面より多数、飛んでくる。前兆のような乱流に巻き込まれ、カプセルはバランスを失った。

「くそっ!死ぬな俺!もう!ライアライア!信じられナイヤ!」

地球だって、マワラア!

(つづく)

未来予想図 ?

2007年6月18日
 コクピット屋根のボタンをカチカチ操作。

「させるか!血栓溶解弾、発射!続いて、<フィブリン傘ネット>作成!」

 椅子を左右に振動させ、ビシュビシュビシュ、と血栓を狙い撃つ。
 実はボン先生の操作でなく、機械がオートでやっていた。

 眼前で炸裂する、巨大血栓。
「ヒャッハー!」
通り過ぎた血栓を、振り向いて背後から。ハリソン・フォードのように上目遣いの遠目でビシュシュシュシュシュシュ、と連射、ズドーンと粉砕できた。

『第二波コウゲキ、ヤガテクル』
「また来るか・・・!さて、そろそろいいだろ!」

血管壁から、網目の形をした傘が離れて浮いてくる。

『ケッカンニ、ブツカッタショウゲキデ、ケッセンガトンデキタモノトオモワレル』
「とほほ・・もう夜食はやめにしよう」

 プチ、とボタンを押すと、カプセルより細い糸が飛び出した。糸は傘にひっかかり、カプセル前方で大きく立ちはだかった。

「いつでも来い!」

 大きく開いた傘に、飛んできた血栓がいくつも捉えられる。そこをさらにさらに狙い撃つ。
「イー!ハー!」
やがて傘ごと溶解し、血栓はすべて処理した。

『ケッセンヨウカイ、シスギタタメ、シュッケツケイコウニ、チュウイセヨ』
「出血シンチスキャンでは・・・異常ないな!」
画面では出血を示す所見はない。

 カプセルはさらに流され、右心房を経て右心室へ。そのまま心室中隔にくっついた。
「あと猶予はどのくらいだ?」
『アト15フン』
「静脈系をさかのぼって、腕のほうから出よう」

右腕に駆血帯を巻く。

『コウホウヘハ血液のテイコウアルタメ、コウタイハ不可能』
「なに?じゃあどこへ行けというのか?」
『ハイドウミャクニ、ススム』
「あかんあかん!すると行き止まりだ!頭、大丈夫か?」
『アタマハ、大丈夫デスガ、アナタノ、ハイガ、エシ、シマス』
「君と話してても、何も進まんな」

しばらく考え、ボタンを押した。
「後ろへ行けないなら仕方ない。荒っぽくいくぞ!いたたた!」
ボタンを押し、思わず胸を押さえた。

『シンデンズ、イチブイジョウアリ』
「一時的な、血管の痙攣だ!わざとやってる!」

 画面上、冠動脈の前下行枝の先端が見えなくなっていく。
中隔と下壁の間の角が、みるみる黒っぽくなる。

「突っ込むぞ!」
カプセルは角を突きぬけていく。通路は所々、電気で焼妁。
「いたたた!」言いようのない激痛が走った。

 スパズムを解除し、冠動脈の状態は元通りに。
『シンボウサイドウ、シュツゲン』
「最近、ストレスでたびたびなってたから。慣れてる!」

 やがて左心室側の心尖部から、カプセルが左心室内部へ飛び出した。
 流速が早いが、なんとか左心室前壁に着地。

「ここから壁をつたって、脳を避けて腕まで行くぞ!」

左手肘にAラインを確保。少しだけ血が飛び散った。

「これでなんとか解決だ!」
『スウミリノ、ケッセン、サシンボウニ、シュツゲン』
「うげあ!最近の心房細動のせいか!」

その血栓の様子がおかしい。超音波では微妙に揺れて見える。

「画像が狂ったか?」
『ケッセンノフチャクブ、フアンテイ』
「なに?」
『フアンテイ』
「線溶系を急に活性化させたのが、間違いか!」

 左心房の中。数ミリ大の血栓の根元が、ズズズ・・・と轟音で軋み始めていた。

「ボーシエッ!あと5分しかない!」

 ボン先生。世界を救う前に、まずは<自分>だ!

未来予想図 ?

2007年6月20日
「ここを出る前に、あの血栓を狙い撃つ!」
『モクヒョウ、トラエマシタ』
「発射ァ!(←沖田艦長風)」

血栓溶解剤が発射されるが、動脈血の流速には勝てず、それていく。

「計算し直せ。くれぐれも弁には当てるな!」
『フセイミャク、アルタメ、キケン』
「電気ショックで治す・・いやいや」
気を取り直す。

血栓はとうとう左心房の壁から離れ、左心房の中で浮遊し始めた。

「け、血栓が・・ピンボールのようにあちこちと!うわあ!」
ピンボール様に、血栓が左心房内の壁を行き当たりバッタリ。
「ここ、これが左心室に入ったら、そのまま脳天を直撃だ!」

左心室の下方から見上げるが待っててもしょうがない。

『ケイサンデハ、アトイップンデ、サシンボウカラ、デマス』

「エンジン逆噴射!心臓の出口、大動脈弁直下まで先回りする!」
流速に耐えながら壁を這うように辿り着く。

「こうなったら、血栓と一体化してもろとも体外に出すしかない」
モニター画面で計算。到達時間を測定。胸にパッド。
「体外ペーシングを利用して、逆流を作り出す!」

赤信号が鳴る。

『ケッセン、サシンボウヨリ、サシンシツニ、シンニュウ』
「来たぞ!」

血栓が下から飛んできた。
「今だ!ペーシング開始!」
ペーシングのボタンを弾きすぎ、思わず気を失いかける。カプセルは壁から離れた。
「ぐぐ!逆流はしたか・・・?」

カプセルが前もって認識した血栓表面に、なんとか結合。
速度をゆっくりに調節しつつ、大動脈へ。

<ボン先生>
「Qの声か?」
<ほう。もうそろそろ終わりかと思ってましたが>
「お願いだ。最後の望みを」
<どうぞ>
「トイレに行かせてくれ。シッコがしたい」
<なんですと?>
「代わりに、隠した金を受け取ってくれ。場所は・・」
<なら早くくれ!>
「外にいるんだろ。そこの道路のマンホールを開けてくれ」
<ありがとう。ボン先生。お金まで>

閉じられた壁のうち、右側の1つだけが上にスライドした。

画面に食い入り、左側に見える穴をいくつかかわす。そして・・

「よし!この穴だ!」
ハンドルをきり、穴に突入。

確保した肘のA(動脈)ラインの横、50cc注射器を接続。透視台の上へ飛び乗り、カプセル位置を見定める。

「来た来たこっち来た・・!うらあ!」
注射器を引く。
「うらあ!うらあ!はあはああと30セカンズ!」

透視画面では、カプセルは映ってない。転がった注射器を数本持ってトイレに駆け込み、
便器を開け、レバーを持って一言。

「受け取れ!」(←シュワの吹き替え?)

ズドドドド・・・と勢いよく流れる水。

マンホールを開けるQ。
「アッ・オー」
(爆発)

命からがら、やがて窓からのぞくボン先生。

「ジェームズ・ボン先生!ウィル・リターン!」
道路に向かって立ちションの構え。そして・・・

「うがあ!スレッガーさん!いてえ!いてえよ!」
思わず飛び上がり、2階から落ちる。

・・・尿路結石は、小さいものほど痛いらしい。

「落ちるかよ!」
大きなふろしきがパッと開き、四隅を手足指先でつかまえる。

爆風のおかげで、フワ〜、と大空に浮く。
「ござ〜るござるよボンボン先生はぁ〜!愉快なメタボ!患者でござる〜!(カメラ目線→)患者でござる!ああサム寒!」

 軍に目をつけられたボン先生は、翌年軍医として・・・イージス艦にて北の地へと旅立った。

「サー!イエッサー!(坊主頭)」



(おわり)
 
 シェイク!シェイク!ブギーなむなさわぎ〜!ちょベリベリサンキュ〜ヒッピハッピシェイ〜ク!

 <しらけ世代>が増えてきて、こういうノリも減ってきた。

 それでも今はビヤガーデンの話が出てきたり、お中元も贈ったり貰ったり何かと金がかかる時期だ!

 夕方仕事を終えて、ひとり部屋に戻って愕然とし、腰を抜かしてうずくまるボン先生。

 死のメッセージでも届いたか?

「ふえ〜ん。朝からクーラー、つけっ放しだったなんて・・・」

 独身の皆さんも、気をつけて。

「あしたから晴れる〜や〜!」

 当面、晴れはないようです(天気予報より)。

「薬剤性肺障害」

2007年6月20日
 
 今月届いた内科学会雑誌。正直、内容的にパッとしないものが多くなったような気がする。理想と理屈が未だに一人歩きしているというか・・・。今年のキーワードは自分的には早くも<温度差>である。

 もうちょっと、現在のニーズに合わせたものにしてほしい。

 例)「僕にもできる小外科テク〜外科医からの願い〜」「保険適応内の処方術」「反省座談会〜あのとき私は言いすぎた〜」「慢性期の管理〜現場の声〜」「サラリーマン特集〜3割負担を守る〜」「年末特集:今年の医療事件を振り返る〜その教訓〜」

 でも今後はこういう雑誌の記事も、時々拾ってみよう。

○ サプリメント

≪ 2005年のアンケートでは成人男女の6割がサプリメント・健康食品を利用していて1ヵ月平均4700円も出費している。

 2001年には厚生労働省により「特定保健用食品」「栄養機能食品」の2つが定義・・これらは科学的根拠が保証されている。しかしそれ以外の「健康補助食品」「栄養強化食品」は根拠がないまま販売されている。 ≫

 とある。根拠がないものには、肺障害や肝障害などの副作用はあってもおかしくなく、「飲んでも大丈夫でしょうか」と言われても医師側は(副作用の)予測などできない。そういう知識を勉強する機会など全くない。素人同様といっていい。

 ましてや売る側は買わせることと自分の利益で必至だから、何か起こったら?なんて知ったことではない。当然、薬を褒めちぎることこの上ない。

 口達者で褒め言葉が上手な副業持ち人間には、特に気をつけよう。

 西洋医学では、特に以下の薬剤で肺障害が起こりうる(雑誌参照)。医師で最低でもこのうち4つが浮かばなければ・・情けない。

○ アミオダロン(抗不整脈剤の1つ)
 ・・ 重症の不整脈に用いる。副作用は多彩だが肺障害が最も重要。急性発症は多くないが間質性肺炎を中心にいろんな肺病変がおこりうる。

○ 抗リウマチ薬
 ・・ メトトレキサート、ブシラミンなど。整形の医師は肺疾患は通常素人なので、内科の同時受診は必須である。

○ イレッサ
 ・・ 肺癌治療薬の1つで、間質性肺炎の死亡例多発で話題になった。最近は投与適応の基準がより慎重になっている。最近メディアでは下火に見えるが、これを取り巻く話題は後をたたない(ヤフーで<イレッサ>を入力し、ニュースのカテゴリ参照)。

○ 小柴胡湯
 ・・ 漢方だから副作用がないという認識が、これによる間質性肺炎の発症で覆された。急性に発症するが早期発見(息切れが重要!)できれば致死的ではないとされている。

○ その他抗がん剤・抗菌薬

 
 先日、BSハイビジョンで初めて録画鑑賞。経済に疎い私でもそのインパクトは十分伝わった。

 医者も年長になると責任者役をいろいろやらされることが多くなり、その一方で組織の構造、経済的な仕組みを十分理解しておく必要がある。

 医療界でも外資の進出はすでに起こっているそうで、赤字で経営困難なあちこちの病院がターゲットにされていると聞く。

 外資でなくとも病院による病院乗っ取りの場合、生まれ変わるための改革がいろいろなされていく。まずは経営者、各部署の責任者の首切り。新規給与体系の提示。

 「ハゲタカ」は第一話しかまだ見てないが、外資なら以下のような交渉が行われるものと思われる。医療版。

「あなたは院長として年に、一千万もらってました。これを今後、五百に下げさせていただきます」
「なに!」
「入院患者数をある程度維持できない場合、さらに減額。慢性期患者を退院させ、急性期はとことん検査させる。売店のおばちゃんもクビ。診療科はこれまでの内科だけでなく複数の診療科にわたって・・・?問題でも?」
「うぬぬ・・・!」
「返事がありませんので、もういいです。院長先生は朝から夕方まで外来のみの割り切り診療。病棟は持ちません。比較的、気楽な診療といえます。しかも給料は据え置き。どうでしょうか」
「ま、まて!しかし楽そうだから、それ頼む!」
「(怪しい外人側近)ハンコクダサイ。タイムイズマネーデスノデ」

(調印)

再び説明する外資。

「平常診療は以上。それと書類の裏にあるように夜間専門外来のコール制にも協力していただきます。いかなる理由があろうと、コールがあった場合15分で病院にかけつけること。間に合わなければ1分あたり1万円の天引きとさせていただきます」
「ひいいしまった!お、お前は、はは・・ハゲタカだ!」
「ハゲタか?・・・ええ。もうすでに、禿げてます(カツラ脱)」
「す、すべて金か!患者を救うのが、わしらの仕事なのに!」

窓を見て、そっと振り返る外資。

「あなたの経営では患者さんは助かるでしょう、でも病院は死ぬ。私たちは違う。病院を患者さんごと救う。そういう違いです」

こんな世界が、医療にもやってくる!
 唐突に目に焼き付いてくる、「ダイハード4」の予告編。映画館に行くまでに、どれだけネタをばら撒かれるのか!

 散髪屋で病院の情報収集するのは自分の習慣だが、ときどき最新映画のストーリーを平気でばらすオヤジ(店の主人・客)がいて困る。デリカシーのない人間の多いこと多いこと。

 野球の結果をダイジェストで見ようとしたときに、「あ。今日は阪神負けたね」とはさんでくる同僚も、しかり。

 ネタばれ注意報。だがそれは、何も散髪屋に限らない。

 タクシーに乗ってて流れるラジオ。ガソリンスタンドで流れてる場合もある。ツタヤなどレンタル店でも関係ない。<ネタばらし>は常にあなたを狙っている。

 最悪なのは、映画館でもそれをやってる輩がいることだ(立ち話で)。おいそこの奴。上映前にパンフ開けるな!

 もし、あなたの前で<ネタばれ>が炸裂しそうになったらそのときは・・・!

 「(両耳に人差し指突っ込み)わー!わー!わー!」

 これに限る。イッピカイエイマザファッカー!
 
 噂をしてたら、もう発売!

 医療人にとって、こういった内容が他人事でないことは前回指導した通り。ほら、もうそこで<ハゲタカ>があなたを狙っている!クワックワックワッ!


外資、医師に書類を見せて回収。

「先生、それでは新規開業ということで」
「あ、ああ。任せてるが大丈夫なんだろな?」
「先生のご予算内で、すべて用意しました。テナント代、医療機器費用、家具一式に冷蔵庫などの備品類」
「な、なんとか全財産で間に合ったか。では、すぐに開業していいんだな?」
「はい。医師会の許可も得ましたし、あとは先生が存分に診療を進めてくだされば」
「そうか!ひひひ!ようし!」

(側近)「ハンコ、オネガイシマース」

(調印)

眼鏡をなおす外資。

「では、先生のご希望通り、開業状態にできました」
「ふむ!もう帰っていい!」

近くに立っている青二才医師。
目を丸くする老いぼれ医師。

「むう?なんだこの若造は?」
「若造ではありません。彼はここの院長です」外資が説明。
「いんちょう?なんで?わしが院長や・・」
「院長は、別で立てました」
「なに?」
「あなたの経歴を調べさせました。1年毎の勤務。長続きがみられず、職場での評判も良くない。セクハラの評判もある。見通しはかなり暗いと判断しました」
「なにい?金を出したのはわし・・」
「もちろん知ってます。しかし私たちも手を貸す以上、沈む予定のタイタニックを引き上げるリスクは冒さない。我々は、いわば船出した船の・・羅針盤といったところでしょうか」
「わ、わしがこの若造の下で働くのか!」
「心配ご無用。院長の若先生は通常出勤。あなたは夜間診療部として頑張っていただきます」
「やかん?開業医なのに?」

ため息をつく、外資。

「まだ分からないようですね。これから昼の診療報酬は確実に下げられる。夜間の対応がどうかで、開業医の勝ち残りが決まります」
「う、うう・・・!」
「嫌ならしなくていいです。若先生だけに頑張ってもらってもいい。でも、診療所はもたない。あなたの払った莫大な資産は海の藻屑と消えるでしょう」
「ふ、ふざけるなっ!う、撃つぞ!」ポケットに手を入れる。
「スナイパーを雇ってます。撃っても無駄です」
「なにっ!ばっばかな!」

老いぼれは、銃を取り出した、そのとき・・・

ズキューーーーーーンーーーー

医師は眉間を撃たれ、そのままカーペットに転倒した。

ガラスの穴の向こう、高層ビルから狙い撃ったのは・・・

やはりゴルゴ13。

「・・・・・・・・・・・」
 吹田のコースター事件のあおりで、尾道の遊園地が営業を停止した。経営難が悪化。要は、安全点検のコスト荷重による経営圧迫である。

 実は医療側でも、医療機器の安全定期点検がこの7月から<ひっそりと>義務付けられるが、この安全点検は法的ながらしかし強制的なものでなく、<各病院が各自管理しマニュアル作成すること>といったユルい内容となっている。つまり実際の定期点検の有無は各病院それぞれの判断に任される。

 国公立などの病院は別として、個人や企業が経営する(つまり利益優先の)病院の場合、定期点検を新規にいくつも契約したら、経営はかなりの打撃を受ける。経営者がどう判断するか・・。

 患者側からこういう問い合わせ(きちんと点検しているか)をするのは無理があるとは思うが、7月になってもこういう点検をまともに行ってない病院は、(経営の行先が)かなりヤバイと思っていい。

 今後の立ち入り検査で、少しずつ明るみになっていくだろう。

 先日WOWOWで「チャイナ・シンドローム」が放送されたが、この放送局の番組は内容がいつもタイムリーすぎてヒヤヒヤさせられる。
 外食ばっかりしてると、なかなかありつけない素麺(そうめん)。外食で注文しても、ちょこんとしか出してくれない。食べ物に気を遣い遠慮する(量を気にして)なんて、ナンセンスだ。

 忙しい身でも、作るのは実に簡単だった。まずスーパーで「揖保の糸」を買い、日持ちしないがカットネギ、かまぼこ、すりゴマ、これらを過剰なほど器に入れて、薄めた濃縮だし。

 そしたら、麺が入らんかった!だが、それぐらい豪快なのがいい。

 CMのごとく、寝ている野郎2人のもとへチリンチリンと持っていく・・・彼らはなぜか、(こういうときだけ)反射的に起きる。そして・・。

 医局員3人で、死ぬほど食った。 みな倒れて天井を見つめる。そして、なぜか老後の話。

(自分)「もしおい、老後1人になって食事するとなったらどうするよ?」
(後輩)「先生のとこに、お世話になります」
(自分)「どある。ろくに自炊できんぜ。するとやっぱ、揖保の糸だな・・でも自分で作れよおまえら!」

 そして思った。仕事柄、退職金もないだろうし年金も怪しい。でもこれなら、安上がりな割にありがたい。

 ・・・今年のお中元に決定!

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