疲れているのは分かるが、ため息をつく癖は絶対に身につけてはいけない。これを実践して楽になるわけではないし、周囲に不快感を与えるだけだし、何より自分をおとしめる行為である。

 陰でマネされる恐れもあるよ。
例)「あの先生、ため息ばっかりついてたよ」

 病院でよく聞くため息の種類

・ 「フーッ!」
・ 「ハーッ!」
・ 「ふあ〜あっ!」
・ 「あ〜しんど〜!」
・ 「はぁ〜だるいわ〜」
・ 「ァァァァァァァ・・・ァァァ」
 医局で誰か来たとき、こうやって接客できる人間は策士である。もちろんちょっとこだわってるほうがいいし、旨いのが条件(もちろんコーヒーメーカー)。

 こういったことがキッカケで、スムーズな交渉にまで持っていけることもある。

 僕(内科医)がした実践例↓。ほぼ初対面の外科の先生が相手。共同での診療を週末にお願いしたい。週末での介入は通常嫌がられる。

「先生。これどうぞ」
「あーっ。すんませんねえ!」
「いやいや。まだまだ駆け出しですが」
「上手いですよ先生」
「とんでもない。先生のオペにはかないません。あそうだ先生。こういう患者さんがいましてね。休日前で申し訳ないんですが」
「はいはい。どんな方で?」
「ちょっと持ってきますね。目を通していただくだけで」

その間、そこでコーヒーを飲んで待っててもらうわけだ(拘束)。

「・・という方ですが。外科的な意見もお聞きできれば」
「はいはい・・・ずず・・・あ、いいですよ。私も診ますわ」
「ありがとうございます!」
「ごちそうさまでした」
「いえいえ。洗います洗います。先生の大事な手をそんなそんな!」
「あっはははは」

 小道具的ではあるが、実にスムーズな交渉に役立つ。潤滑油的だからスムーズになるわけだ。
 例えば経験年数が増えて、自分の専門外の科を習得しようというとき、1から丁寧に教えてくれる時間や余裕はない。というか、今さらハイハイと教われないというプライドの高さが邪魔をする。

 だからといって成書を読破しても、やはり「百聞は一見にしかず」である。些細なことでもその専門の人間にひっつき、「こうしようと思うのですがどうですか」とか「こうしたのですがどうでしょうか」とか、常に現場で自分を試さなければならない。そして夜中に飛び起き、本を開いて「あれはどうだったのか?はあはあ」と血眼になった初期の経験をしてほしい。

 ひょっとしたら呆れられたりするかもしれない。しかしそういう場で身に着けたことは100回朗読するより体に染みる。人は「耳学問」と呼ぶ。

 人間、弱いところを強く見せようとするから、また恥を隠そうとするから、最近のあのような事件が起こったりするのである。
 診療とは区別すべきかもしれないが、診察する患者が増えるほど残務整理も増えてくる。これらの書類はときに膨大だが、これらは医療費の返還など患者の生活に直接かかわっているものだ。

 患者の予後がどうとかいうが、実際家庭の経済的背景も患者のQOLに大いに関わる。そうして彼らの生活まで案じるなら、こういう仕事も診療のうちである。

 だから、できる人間の机の上は、常に整っているものである(でもちょっと言いすぎ)。

 要は、できるはずのことは早くやれ。それだけのこと。
 簡単なことだ。意識するかしないか。しかしうっかりすると、近くの大事な会話を見落とす。ただこれは、陰口を盗み聞きしろという意味ではない。

 ときにある光景だが、詰所とかでナースらがドクターに報告する勇気がなく、しかし近くでボソボソ相談しているときがある(つまりかなり気を遣っている)。廊下でも、ドクターがいるのに患者の家族が近くのスタッフをわざわざつかまえて患者の経過を聞きたがる。

 そんなとき医師がフットワーク軽く気づいてあげれば、遠まわしな物事がいとも簡単に解決してしまう。鈍感な医者はいつまでたっても裸の王様。

 一見ポーカーフェイスの周囲は、実は君が思ってる以上に気を遣っている(いつも忙しそうにしてるから)。
 外来受診、入院患者の診察、患者家族への説明、詰所への訪室。去り際に「次は〜にきます」「次は〜ですね」と約束してない医師は案外多い。当たり前に「明日の朝、また来ます」でもいいから言ってみる。信頼関係の第一歩。

 その医師が忙しくて1日1回しか来ないとしても、患者たちが待っているのは「先生は次いつ来てくれるだろうか」という期待と不安である。

 夕方の詰所などは、けっこうこれで悩まされている。周囲に分かりやすいパターン、というものを作ろう。

「男と女は違う」

2007年5月10日
 だまって聞きなさい、悟空。

 病院勤務は、これへの意識の大切さを嫌ほど痛感する。看護士も増えてるようだがナースステーションは圧倒的に女性優位の職場だ。

 医療には個人的感情が介入しない理性的な仕事が求められるが、男女の違いは隠せない。女性優位の職場であるせいか、「安定性」「不安定への危機感」「集団性」「適度な同情性(意味を誤解しないように)」的な性格がある。しかしこれがナース業務の資質にあてはまる(総合的にメリットとして生かされている)。

 男性医師はこれら(男女の感性が違うこと)をよく理解しておかないと、思いもよらないイジメにあうことがある。

<ふろく>「ダイ・ハード」鑑賞会の男女別の感想(とある病院にて)。

男性陣
・ 武器がカッコイイ
・ 思わず応援してしまった
・ 男の中の男
・ 1人が圧倒的巨悪に立ち向かうのがいい
・ ラストの立ち直った男(パウエル)の銃声が感動的
・ 傷つきながら戦う姿に感動

女性陣
・ 主役のオッサン、シャツ一枚で汗臭そう。腹出てるし
・ 子供まで巻き込まれてかわいそう
・ 人がどんどん撃たれて吐き気がした
・ なんで(カールが死んだかどうか)確かめなかったのか
・ もっと早く(FBIを)呼んだらよかったのに
・ けっこう(カール)いいかも
・ 結局、復縁したの?

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