真の孤独

2012年3月22日 連載

 若い世代に心配することの1つに、果たして恥をかくほどの苦い体験をすることができるのか・・・?というのがある。

 もちろん、人生うまくいくにこしたことはない。勉強やスポーツができてモテれば不満はないかもしれない。しかし、必然のようで偶然なのが人生だ。これを必然にすべく努力がいる。1から2にするためには、まず0から1というつらい修行が必要だ。

 1からの出発というのは全体で同じ条件から始めるもので、(平等という点で)出発点からして皆恵まれている。しかし競争社会において落ちこぼれた場合、やり直しを迫られる。その際、自分がすでに遅れているという劣等感から始めることになる。

 その劣等感の中、それでも目の前の1つを独りでやり遂げる訓練が必要になる。自分の経験では予備校生活がそうだが、それにしても一番つらかったのは、つい面接で突っ張ったために予備校の寮の試験にすら落とされたことだ。

 研修医時代でも、いくら徹夜してボロボロになってもそれでも技術や能力が上がらず、上から見切りをいったんつけられた経験がある。このあと原点に戻ってやり直したことも記憶している。いずれも孤独から掘り起こされたものだ。

 こういった経験があるかどうか。いや、今は、むしろさせてもらえない状況にあるのではないか、と思う。

 何がって、真の意味での孤独のことだよ。


医者とアイテム

2012年3月22日 連載

 医者が好きなものは以前も挙げたが、外車にゴルフ、ワイン、競馬、若い女、そして電子機器。以前はマック、今はiPad。全てに共通するものは、何だろう。

 ちょっと無理はあるが、自分は<操作性>と断言する。それはその、つまり・・・人間様が支配しているという実感をこよなく(第3者へ)見せつけることができるアイテム、ということだ。

 難解な<それ>を操作することでそれに命を吹き込み、思いのまま操る。男のエゴイズムの行きつく先だと思わんか。何?思わん?ワンワン!

 ただし、女は違う。扱ってるつもりが、知らない間に自分が扱われている・・・そう、アイパッドのように気分でチョチョイと、クルクル回して翻弄・自由自在。キャッシュの引き出し、ヘソクリも思いのまま。夫のスケジュールも全把握。相続問題も事前に解決。

 この逆転現象は、医師年齢40前後に多発しているものと推察される・・・!



モテキ

2012年3月18日 映画
 医師のモテ期はどうか。今の医師らは昔時代の医師のような慢性(マンセー?)モテ期とはいかない。黙ってもモテている一部の医師は除き(笑)話を進める。

 やはり最初のモテ期は研修医時代だろう。純粋で、ひたむきでいろんな可能性を秘めている。若さゆえの過ち、いや魅力だろう。ただし、女医のモテ期はこの1期で終了するものと思われる。

 次のモテ期は、5年目あたりの一息ついた頃じゃなかろうか。この時期医師は妙な自信を持つようになり、言葉にも説得力が出てくる。心も体もチンギス・ハンである。この一種フェロモンのようなものとタフさが周囲を魅了する。

 次は結婚後に子供が大きくなり、再び時間に余裕ができた頃。縛られていた頃のストレスを発散するがごとく振舞うが、素人相手ではたいてい不発に終わり、玄人志向になる。いちおう、お水相手のモテ期かな。

 最後は50代あたりの当直を退き始めの頃と思われ、この頃はもう知ってる女性らが顔見知り状態であり新規開拓は不可能と思われる。若年目当てはリスクが大きく精神的についていけない(と聞いた)。とにかく聞き上手な女性を探しては過去の自分、今の自分を正当化していくのである。

 ここまで来ればもはやモテ期ではなく、ボケ期である。

 < ボケよ!老いて!ボケよ! >

 と、金目的で担がれないようにしようっと。




 


人柄

2012年3月18日 連載

 医師の人柄像はどこか共通してそうな部分がある。山田洋二が描く医者像、あれはかなり勉強している。上から目線で、冷酷<冷却でクール、守り姿勢で寡黙、見るからに<勝てそうにない>第一印象。

 一匹狼ならそれでもありだが、年月がたつほど医師はチーム、人間関係を要求される場面に出くわす。たとえばどんな平和な病院でその医師が適切な診断を下していても、最悪の状況におかれることがある。どう診ても軽症なのが、実は難治性疾患だったりして毎年訴訟がある。

 その内訳をみていると、多くのケースが医師とその他スタッフとの解離だ。医師はたしかに診察、検査、診断、治療はした。ただ問診票など自分の手元にきたものだけが材料だ。周囲のスタッフが気づいた点や患者・家族側の情報が十分渡ってない。検査・治療でも、一匹狼の視点だけでやる。些細なミスもダダ漏れる。

 さらにその裏を覗くと、やはりふだんの雰囲気にも問題があるケースも多い。すぐ怒ったり、周囲の意見をバカにしたり、ただひたすら暗かったり。こうなるとサポートもされることなく、裸で医療をすることになる。

 人柄はオーラに出る。それが患者の不利益にまでつながることがあるということだ。



 

 




評判

2012年3月18日 連載

 それまでの評判は変えることはできないし、まして嘘を吹きこんでもその後の評価が矛盾する。なのでここは敢えて矛盾を作らず、ありのままで始めるしかない。

 ただ、もしそれまでの悪い点が反省できてそれを直すようにしたいというアピールができれば大したものだ。ま、そういう医者に会ったことはないが。

 面接の前後、事務らはあちこちに電話してその医師の評判を聞いている。人柄(短気か優しいか)、能力(積極的に数こなすか)、売上げなど。自分も雇う際は必ず調べている。当然、女性関係や医療ミスなども耳に入る。履歴は消されてないと思っていい。

 自分でも気づかなかった悪い評判もあった可能性も考え、面接時のアピールがその後と矛盾しないようにしよう。


独身

2012年3月18日 連載

 民間病院は、熟練医師が多いその分既婚者も多い。既婚者だと家族の病気など都合ごとが多く、出勤面での臨時アクシデントが多い。運動会や参観日、法事、子供の病気など。

 医局で雇う医師数がギリギリだったり上層部がサボりだと、必ず誰かが無理係になる。いわゆる留守番係、待機など。たとえば外から来るはずのドクターがいきなり来れなくなったり、当直の医師が見つからない時。

 常勤医師に相談が来るわけだが、上記の理由で既婚者ほど気を遣われるし理由もある。独身ほど断れないのは明らかだ。でも独身でも実はそれなりの事情は持っているものだ。

 なので面接時にはフリーっぽいイメージは持たせないことだ。フリーは無料であり、それ以上安いものはないってことだ。

 例:親類医師から頼まれたバイトを不定期にやってます。など。

金銭面

2012年3月18日 連載

 医者は駆け出しの頃はたいてい独身だから、金には困らない。今は給与や休日が十分保証されているのでなおさらだ。

 独身なら30代でもバイトが増えたり民間に移ったりでコストはアップする。だが結婚の機会が増える30代後半から金のかけ方が違ってくる。マイホーム、教育費だ。マイホームはローン自体が計画的だから分かりやすいが、教育費は予想以上の出費を伴ってくる。私立、塾がからむといっそう。

 最近では子供が大学生(医学部以外)になってもバイトせず、または就職難で大学院にそのまま進んだりニート化するケースも増えている。親はたいてい50代あたりにきてるから、このタイミングでの就労時はおもいっきり足元をみられることになる。

 「教育費でお金に困ってまして」とアピールすると、病院側は「なかなか辞めれんだろな」と予測して、無理難題を押し付けやすくなる。なので面接時は強気でいくように(例:父方の資産が十分ありますんで)。

 医学部受験は面接はあまりないが、実はこういったときの面接がどれだけ大事なことか!

新規を雇うとき

2012年3月18日 連載

 これまでも述べてきたが、繰り返し論ずるのは自分の好きなことでもあるので。

(あくまで民間病院のことで、国公立は異なります)

 医者の新規を雇うとき、病院はまずは募集を出す。いきなりドクターバンクを利用するとその後も手数料を取られ続けるため、まずはネット広告から。

 同時にアナログな作戦。事務長関係から各病院の事務関係を通じ、コネを利用した募集を開始。事務関係でなく放射線技師・ナースなど、中には医師と懇意にしている者がいる。彼らは日頃から医師との関係をキープしていて、場合によっては斡旋できる<駒>を持っている。もし紹介できれば10万のバックは保証できる(大阪での相場)。

 次に、常勤の医師の知り合い。常勤医師の知り合いで、他の病院に勤務していて不満があったりあるいは転勤を考えていたり・・・見返りはともかく、そういう医者がいないかどうか。そういったツテで簡単に呼び込めるケースもある。事務方からすると、最もコストもかからず楽なパターンだ。

 と同時にネット広告を出して面接。病院側の関心ごとは「なにができるか」「当直はできるか」という反面、実は「金が必要か」「独身か」「評判はどうか」ということが最大のポイントだ。

 以下、各論。





 アメコミの映画化は、自由なようで非常に制限が強い。たいていが3部作で契約がなされ、いくら人気が出ても<4>は作れない。作るとするならスピンオフか、新規契約下での焼き直し。

 3部作が前提なら、<1>はどうしても紹介編。<2>でやっと自由な展開で、思わせぶりな謎も残せる。しかしここで役者のギャラ高騰と製作費の制限がかかり、また<3>は丸く収める義務もあり、結果的には盛り上げに欠けることになる。したがって面白さ的には2>1>3となることが多い。

 医者の人生も3部作とするなら、<1>は研修・大病院編。<2>は民間病院での活躍編。<3>は引退直前の療養編で、家族のため冒険は避ける。ギャラの高騰など、アメコミ映画の運命と似てないこともない。

思い出し笑い

2012年3月16日 連載

 ・・をするのはエッチだと言われるのは御免だが、春になると自転車に乗ってはにかむ連中をよく見るようになる。その笑い方は幸福的というより、やや嘲笑的である。

 自分もいくつか<ツボ>のようなものがあり、たとえば思い出すと笑ってしまいそうなギャグがいくつかある。いや、ギャグというよりそれは場面である。なぜ場面が笑えるのか。わからない。

 どうしても笑ってしまうのが志村のバカ殿だ。バカ殿がいきなり長介に怒り出して刀を抜く、効果音楽つきで。こういった場面を、なぜか散髪中などで思い出す。そんな大事な時に。何故?鏡の向こうの自分が笑う。腹から笑いそうになる。

 その散髪屋+バカ殿を思い出して、はいこれがまた笑える。その笑ってるの思いだし、さぁまた笑う。笑う、笑うのオンパレード!(間)さてその医者。困ったことにこれから外来診療。相手は患者さん。症状あっての患者さん。そのカーテンの向こう、医者が笑いを抑えようとしてる!悪い医者。そう悪い医者!この悪い医者!悪いんですねぇこの医者ああヤダよ!

 あとで淀川さんで思い出してみて。きっと笑えるから。




年を取らない。

2012年3月16日 映画

 ジャン・レノに本木雅広など。彼らはさほど加齢を漂わせないように思う。極端に言うと、容貌が以前とそんなに変わってない。

 自分も、そういうところはかなり気を遣っている。特に女性を見て思うのだが、彼らは特に<劣化点>のようなものがある。女性が日ごとに美しさ・バリエーションを増す日々につれ、男から見てそれが「あれっ?」となる瞬間だ。

 これはもちろん、男にもあると思う。ただ男は色気でなく、いきなり老け込むという意味で。老け込むというより<汚くなる>というべきか。自分もいつかはこの<老け>に突入するのだろうが、やはり以前のコンセプトを貫こうと思っている。つまり「あまり変わらんねえ」と言われたい願望がある。

 ただし、「いつまでたっても、アカンねぇ・・・」というのは男として失格だ。女がどう言おうと、男は仕事で輝く動物だ。


 心不全の初発症状に食欲不振があり、また心臓からの血液供給不足による症状(貧血と同じく倦怠感、脱力感、動悸など)、胸水つまり水が肺の外にたまって肺を圧迫するため呼吸回数が増える。

 通常できればこの胸水は利尿剤の投薬で徐々に減らしたいところだが、穿刺したということはよほど貯留していたのか、利尿剤の反応そのものが悪かったか。など。

 ただ穿刺によって血管から肺の外に圧力がかかってしまい、再び水が貯まることも多い。これに伴い栄養分のアルブミンまで漏出し低栄養となり、栄養補給したいが点滴負荷が過剰になりがち。こういったジレンマを医者は毎日抱えている。

 こういう問題に慣れていない医者だと、助かる患者も助からない。

新薬について

2012年3月1日 連載

 アストラゼネカという外資系薬品メーカーがいらん知恵を吹きかけた影響で、医師の接待が縮小・・していくのは別に構わない。これからゾロ品がゾロゾロ増えていくだけだ。CMではないが「すべては患者さんのために」だ。

 それでも正規メーカーらは新薬を売っていかないと生きられない。最近では認知症のパッチ、ワーファリンに代わるという血栓溶解剤なども登場はしているが副作用の頻度が多く、後者の薬剤に至っては殺傷的ともいえる。

 気のせいかもしれないが、最近の新薬は発売前に完全無欠というほどの触れ込みをしておいて、致命的な副作用が出てもそれでもひるまないほどの<圧力>を持っている。迷惑するのは患者だ。訴訟して負けるのは医者で、製薬会社ではないことを医師らは再確認すべきだ。

「すべてはお医者さんのせいに」せんといてくれ。


 誰もが驚いたと思えるような、白黒スタンダード画面の受賞。自分らにはあまり受け入れられそうにないものに思えるが、サイレントはともかく白黒映画もそんなに悪くない。画面に入っていきやすく、ついには白黒であることも忘れてしまう。

 日本でもいずれ公開だろうが、映画配給会社は売るのにけっこう苦労するんじゃないか。若い人は劇場には行かないだろう。好景気だったら、これを機にでHD4:3テレビなるものも売り出せる。

 医療関係の学会でも、ある議題のコンセプトがいきなり<基本>に戻ることがある。降圧剤としての利尿剤を見直せ、とかβブロッカーを見直せ、とか。こういうキャンペーンは医療費の抑制が背景にあるのだが。

 ひょっとして映画界も、ローコストを推進して製作費を抑える姿勢か?

猿の惑星

2012年2月27日 映画

 ・・・どんどんスケールアップするのかと思いきや、最後は猿らしく丸く終わる・・・!これでは「猿の惑星」とは言えない!ああ、だから「創世記」なのか。ビギンズなのか。またしても。

 ジェームズ・ブランコはやっぱり、スパイダーマンのひねくれた涙目の若造がハマリ役。「2」の冒頭の演技。あれだ。

 しかしCGが進歩したとはいえ、やはりその「合成感」は顕著に感じる。「あぁ、これCGなんだよな。実物ちゃうねんなぁ・・・」と、驚きよりも落胆のほうが前に出る。

 それより今は、地球が「核の惑星」にならぬよう祈っている。
 給与の削減は、生活の基盤を脅かす。たいていの高給は生活が贅沢に設計されているから、いくら基盤がリッチでもその影響は大きくなる。

 中にはそれでも質素にやる人はいるが、ふつう金が増えたら<金に働いてほしい>と投機的に増やそうとする考えが多い。つまりギャンブル・投資・信託など。しかし上手くいくわけがないので、生活は困窮することになる。

 そんなとき給与が落ち込めば、まず転職を考える。役所関係の人間にはすでにコネがあり、もしものときの逃げる準備はできている。病院スタッフでもボーナスが出ないと分かれば、あっさりと次へ転職する。

 しかしそれでも仕方なくその地に残るのであれば、これまで自分が提供してきたサービス分を差し引く。サービス的なものをやらなくなる。あるいは副業に手を付け、主業が本業でなくなり、そのうちミス・事故が増える。

 こういった場合はまず(ふだん妬まれてるはずの)ボス側の給与を下げ、その末端に一時的にでもいいからドーパミンを流し、それから情報をリークして徐々に受け入れてもらうべきだったのでは・・と思う。

 それにしても、この断行の大胆さ。やはり橋下氏は循環器グループだ。心不全があっても、血管造影するタイプのように思える。




 
 先週、スピルバーグのインタビューがあった。こういった番組だと現在劇場公開中の作品とのタイアップが多いが、そこは抑え気味でスピルバーグ自身の人間性にじっくりと迫るものだった。内容的に打算がなくて非常によろしい。

 いろいろと感銘を受けたのは、彼が「好きだから」今の仕事をしていて(つまり、させられていない)、その全てに追体験が生かされているということだ。しかも、主役の成長過程でありそれを描くことこそが重要だ、と。

 <ET>でよく指摘されていることだが、あの映画は離婚がベースなのだという。父親がおらずそれを受け入れもできない(その意味もまだ分からない)子供が、ETとの別れで受け入れることで成長していく。この別れの場面が、見る人の潜在意識で身近な別れとシンクロして感動させるのだろう。たしかに、20/30/40代と観てきて感動の内容がどこか違う。

 仕事でもあまりに単調だと、自分が何も変わらなくて生きてる実感がない。これまで何年も生きたのなら、それまでの無念を生かしながら(不幸な人にむしろ優しく接するように)自分のふがいなさを反省しつつ、毎日何か変わる・得る日々を目指したい。

 最近のスピルバーグの映画が肩すかしなのは、どうやら映画のプロモーション自体に問題があるようだ。彼の訴えたいことは全く別の次元だということだろう。


 


近況

2012年2月24日 連載
 ここ数日、インフルが激減の感がある。たまにB型が出た程度だった。胃腸炎が増えてきたような。自分の受け持ち患者は常勤先で入院50-70名、外来では1枠で50-70名。その状況での印象。

 2月ももう終わろうとしており、日数が少ない月だけに頭を痛める病院は多いだろう(毎年)。インフル発生で病室を無駄に空けざるを得なかったケースも多かったと聞く。

 いま医師らは接待の3月末終了に伴う<駆け込み需要>の真っ最中で、3月はメタボ化していく医師が増えるものと思われる。じゃあ4月から痩せるのか?接待終了といっても、業界はもうすでに対策ができているところもある(新地など店によって)。

 ただ、開業医の接待は見苦しくて辞めてほしかった。開業医の家族団らんパーティーなどがそれだ。MRを集めて、パートや関係ないスタッフまで飛び入り参加。お前ら最低だ。

 で、病院によっては3月で運命の決済。銀行がレポートを穴が開くように見る、見る。存続をかけたその仕上げとして3月は非常に重要な月なのだ(そこではもう遅いという声もあるが)。



見切り

2012年2月23日 連載
 舞鶴記念病院など、役人が今でも巣食う病院でよくあることだが・・・役人+医師ほど組み合わせの悪いものはない。これはもう、組み合わせた時点で失敗するはずのものだ。

 役人のプレーはスタンドプレーだ。現場には来ない。命令系統の頂点だから、現実的にそうなる。現場を1つ1つ重要視したら組織は成り立たない。今の日本はどこも金がなくそんな余裕はない。パイの取り合いだ。そこはもう力関係ができている。

 役人が医師と協力・・となると、医師は役人が決めた配置で働くことになる。役人にとって重要なのは病院自体の存続であって、そのための基準を満たすスタッフが集まればもう興味はない。これで、コネのある人間らはみな給与体制についたことになるからだ。

 ところが現実には医師はある意味純粋で、次にどうしたらいいかという課題が常に立ちはだかる。これがまた戦いがいのある問題で、予算やマンパワーがあれば何とかなりそうなものが必要となる。しかし役人にとっては興味がないので末端だけを派遣して、せっかく構築された城をワインのように寝かせとく、それに専念する。

 そうなると医師側も「どういうことや?」となってしまい、どんどん時間が経ってついにはノーレスポンスの役人に見切りをつけ引き上げる。役人の動揺レスポンスはその直後だ。

 原発問題でも感じたが、このあたかも死んだかと思わせるノーレスポンス、相手が脱落したあとの素早いレスポンスが日本の上層部の伝統なのだろうと思う。今後これから僕らが戦っていく敵たちだ。これもまた、戦いがいのあるものだ。




 日本の組織では、リーダーは常に嫌われ役である運命にある。かつ巨大なリスクをも背負う。しかしその決定が民主的に国民に委ねられるなら、直球勝負するわけにはいかない。重要なのは説得力だ。

 自分も医局のリーダーとして周囲を引っ張るとき、無理にお願いしなくてはならない難局がある。お願いしてお願いして、その分こちらの苦労もアピールする。それでもそちらの協力を一分でもお願いできないかと、暗に投げかけるのだ。

 橋下氏は内科医の分野で言うと循環器科がピッタリで、一言でいうと「イラチ」。現場で一刀両断、見切るのも早い。実は自分にもそういうところはあり、自分に対立する人間を論破する準備がいつでもできている。だが鮮やかに斬り捨てるほどに、取り残された感のある民衆の反応は冷ややかだ。彼は損なことに、今後民衆に出遅れ感というネガティブ要素を与えそうな気がする。

 橋下氏は西成区という地区に活路を見出すようだが、たしかに大阪市という不良債権に価値を生み出すためには逆説的な方法でいくしかない。マンション・ニュータウン建設して外需的な人口増加を目論むのだろうか?

 ただ、前述のように彼の見切りは早い。「ああ、なんで分かってくれないのか」とつい嘆いてしまう。まるで僻地で取り残された医者の叫びだ。嘆きは自分の心の中に。まずは相手を肯定して、反撃は時期を置いてそこからだ。







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