娯楽を生み出す力

2009年10月24日 映画
 偉大な小説を書く人も、私生活をたどればただ1人の人間だ。サスペンスを描くからといって、陰謀に満ちている人生とは限らない。

 007の原作者はもと諜報部員、それはなるほどと分かる。だが、えっ?この人がこんな壮大な話を描けるの?といたく感じることがある。山崎豊子もそうだが・・・トム・クランシーもその1人。彼はクリーニング屋をしながら「レッド・オクトーバー」を執筆した。物語に役立てたのは、彼のその戦争マニア度。ボードゲームが大好きだったらしい。

 今は「大戦略」もので楽しめるが、自分は(小学生のとき)ボードゲームを使ってない部屋で拡げて、友人と数日かけて戦闘?に励んだ。数メートル遠くから、数日かけて駒がやっと進んでくるのだ。

 真のエンターテイメントは、粘り強さの結晶ということか。

※ なんか終わり方が<ゲンダイネット>みたいでヤだな!





 作り話には、その作り手の体験談がかなり生かされる。はず。ただその時の気分によって、話が暗くなったり深刻になったりすることがある。しまいにはコンセプトまで変わってしまう。

 マンガでも最初は単なるギャグだったのが、知らない間にシリアス路線になったりする。それが作品の方向性、エンディングの宿命にまで影響を与えてしまう。

 その点、「こち亀」には感心する。この作品は最初シリアスなのも多かった。今は時代に合わせてそこそこ(いい意味で)無難な話になっている。

 医療ものは、なかなかそうはいかない。考えれば考えるほど(知りすぎるほどに)、見えない出口に近づくことになる。「ブラックジャックによろしく」を読んでそう感じる。自分も反省したが、そもそも医療ものは<テーマ別の毎回シリーズ>のほうがいいかもしれない。

 で、この「落下の王国」。身の不自由なイケメンと、美少女でない女の子という組み合わせ。アンソニーが馬から落ちて、もし生きていたら・・・の「キャンディキャンディ」のように思えた。 





引き際

2009年10月10日 映画

 メイキング「デンジャラス・デイズ」によれば、監督のリドリー・スコットは撮影進行の遅さから制作陣を敵に回し、様々な嫌がらせを受けていた。悪口Tシャツはまだいいほうで、完成した作品に手を加えられ(内緒でハリソンフォードを呼び出しナレーション挿入)、場面をカットされそれによってストーリーまで変えられた。だが不思議なことにこの作品は徐々に評価され、ついには伝説的な作品となった。何かサクセスストーリーめいたものを感じる。でも男なら、実はこういう成功を望みたいものだ。

 成功するかどうか分からなくても、色々とストーリーを夢想するものだ。少なくとも自分は。自分の診療でいえば、多忙でいろんな問題に直面するもそれに立ち向かい、やがては遅れて評価されて勇退するというもの。ただ評価といっても○○機能病院になるとかそういうのではない。この評価は国サイドや患者側でもなく・・・むしろ自分が自分に下すであろう評価だろうか。

 「アンタッチャブル」でのケビン・コスナーの引き際が理想だ。

『禁酒法が解禁。どうします?』←記者

『一杯やるよ』←コスナー

 このあと記者が唸る表情をするのだが、ここがなんともいえん。

 それにしても、引き際のことをやたら気にするのは・・・何故なんだろうか。



名作恐怖症

2009年9月3日 映画

 自分の悩みの1つに、<名作>の価値が分からない・理解できないというものが挙げられる。絵にしても、本にしても、映画でさえも。歌舞伎はさっぱり分からん。舞台ミュージカルも抵抗あり。あくまで、ここだけの話ということで。

 自分に気に入ったものが名作、それはそれでいいのだが、実際いろんな場所でいろんな人と出会う際、一通りおさらいしておきたいものもある。

 ただ最近、少しずつだが・・・自分の価値観で「これはひょっとして、凄いのではないか?」と感じて実際それが名作であると、妙に嬉しい。最近では黒澤作品に、この「8 1/2(はっかにぶんのいち、と読むらしい)」。

 主役は冒頭からダルそうな映画監督が主役(自伝らしい)。慣れない人間関係をこなしつつ、ダルいダルい、とこぼす。ついに現実逃避に走り、エゴ丸出しの内面までむき出しに。説明描写も不要になり、こちらもいつしか共感・共鳴を抱くようになる。

 思った事を素直に画面に投影する主役・・・刑事役のメルギブのようなアメリカンなあざとさとは、全く別次元のものだった。


 ひっそりと発売されていた「ヤングガン」のコレクターズ版。輸入BDは持っているが英語がさっぱり分からん(特に音声解説)!興味のない人には、ただそれだけの作品。特にウエスタンというジャンルは、競馬と違って女性に見向きもされない。それだけに価値があるかもしれない。

 たしか当時ともに鑑賞した女性の感想は、「あの人(ビリー)のせいでみな追い詰められた。だから全てあの人が悪い。仲間に入れなかったら良かったのに」という女性らしき内容だった。

 特筆すべきは途中で登場する老軍人。トイレに隠れ、ショットガンをヌ~と出して・・あ、チャーリー・シーンが撃たれた!の衝撃。みな一斉に反撃するが、正直どう決着がついたのか分からない。

 今でも駅などで見かける、ほっ立て小屋のような公衆便所。それを見かけるたび、この<シーン>を思い出す。

 以前、医局にいきなり乱入して言ってた言葉。

「ジョン・キニーだ!」

 当時の仲間はみな開業したが、1人は借金して音信不通。

 まさしく<ヤングガン=おたずね者>だ!

 いまどきの開業は、資金を集めてから(結論)!

 ヒッヒャー!チャベスは弾をイッパイ持て!ロデム変身、地を駆けろ~(寒)!

 今のところ<巻き込まれ型サスペンス>を演じさせたらナンバー1なのが、彼だと信じている。

 巻き込まれて泣きそうな顔をしたりするのだが、「本当かこいつ?何かあるんと違うか?」とか「いや、まだ信用でけへん」など常に警戒感を持たせる不思議な俳優だ。悪く言うと、オドオドしていて落着きがなく、演技に余裕がないのである。

 彼の素の表情(斜め上目づかいで、腑に落ちぬ表情)は、ぜひ見習いたい。


巨大な市場

2009年8月14日 映画

 バブル当時から、何かと存在感を出しながら庶民に親しまれていた芸能人・・のはずだったが、この事件。過去の映像が流れるのだが、その経緯がまさしくバブル後の日本の歴史を物語るようで、余計に悲しい。

 麻薬関係はかなりの市場規模だろうから、その市場を守るための工作は複雑すぎて、捜査をかなり混乱・遅延させるものと思われる。

 こういった<巨大な市場>は、なかなかしぶとい。鬼気迫る雰囲気としか思えない<だんじり祭り>などの祭りは死者が出ても平気でやるし、賭け事市場(パチンコ・JRAなど)も増長して債務者を増やしている。パチンコは警察の天下り、JRAは国の利権として生き続けている。宝くじも利権。政治家の利益のためのものだ。

 やはり、市場が大きすぎることが問題かもしれない。大きすぎると利権が何段にも発生していて、市場が潰れたら上層部が<おいしい汁>を吸えない。なので莫大な資金で莫大な工作を行える。最近の薬の講演会も、そういう打算をかなり感じている。

 おそらく国は・・・国民に<気付いてほしくない><賢くならない>ことを望んでいる。あの戦争のときも、そうだったのかな。

 反面教師的な部分として、今後も留めておきたい。

 




 動物パニックものといえば主役が人間で、相手が獰猛な動物という図式が当たり前だったが、本作はそんなとき逆の立場で描いた。つまり獰猛な人間と、家族を殺された何の罪もない動物。しかし人間も単純な悪ではなく、こちらにも家族のカタキという大義名分がある。怒りを怒りで裁く戦いが始まる。何となくイングランドの香りがする。

 テレビCMではパニック・ムービーのように宣伝されていたが、実際の内容は非常に哀しみ漂うもので、モリコーネの音楽がそれをいっそう劇的なものにした(バラエティ番組の再開場面などで流用)。映画にしては意外なクライマックスも衝撃的。

 

 
 今年に最新作が公開らしいが、パチンコブームが牽引役だったのだろうか。それはいいとして、くれぐれも過去の栄光に泥を塗らないでほしい。http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2008/08/01/13.html

 ただ西崎氏の服役中のアイデア(移動性ブラックホール?)は依然時代が<そこ>で止まっているような内容で、どうも新しさに欠ける。地球からの移住というテーマも既に取り組んだ内容だ。

 今の時代、女性客を呼べなければ興競的には成功しない。<レッドクリフ>もエイベックスがアイドルを利用したりして無理矢理盛り上げようとしている。ヤマトも何か工夫がいる。

 まさか声優をジャニーズが担当したり、アイドルに主題歌を歌わせたり・・・ありそうな気がする。そもそも、絵がそっち向けになったり。十分ありうる。

 自分としては、以下の内容でいきたい(発表後のプロットも参考に)。

① 地球への圧倒的な急襲攻撃(定番)。人類は再び、いや三度の地底生活へ。
② 地球防衛軍が挑むも全滅(これもお約束)。主力艦隊は遠方だった。
③ 古代たちメインキャスト、何とか生き残りオンボロ戦艦で宇宙へ
④ 実はあのアクエリアスでヤマト再建造中
⑤ 敵からの襲撃のさなか、凍てつく氷が割れヤマト発進(カッチェー!)
⑥ 敵の小ブラックホール出現、飲まれかけるがワープで乗り切る(定番)
⑦ 敵の第一陣、地球上空で迎え撃つ。防衛軍主力艦隊が全滅。地球は間もなくブラックホールに飲まれることを知らされる。
⑧ 残存艦隊を艦載機で叩き、結局のところ波動砲で撃破
⑨ 隙を見て飛び出してきた地球からの輸送船団とともに、ヤマトそのまま銀河へ
⑩ 敵の第二陣による急襲、そこで伊武・・いや、デスラー登場
⑪ デスラーの助けで敵を突破。しかし輸送船団もいくらか被害(定番)
⑫ 移住可能な惑星を発見、人類はそこに定着。
⑬ 第三勢力が現れ、移住に向けそこの女王と交渉。
⑭ 交渉成立するが、そこへブ中ブラックホール勢力出現。女王ら艦隊が犠牲に。
⑮ ヤマト立ちはだかり、真田の秘かに開発していた対ブラックホールなんちゃらで乗り切る(ここ、しらけそう)。
⑯ 女王の遺言により(たぶん何か渡されて)、地球を移住可能にすべくヤマトが旅立つ。
⑰ 太陽系で最終的な戦闘。成長した大ブラックホールに飲まれる(ワープ無効)が、そこに発信源となる小惑星を特定。白兵戦(お約束)で本陣に乗り込み爆破。船体は粉砕寸前までいくも、デスラー死に際に放つ瞬間物質移送+ヤマト波動砲の反動により辛くも脱出。
⑱ ブラックホール消滅。女王、宇宙に浮かんでたたえる(感動する音楽)。真田が何か一言。
⑲ ヤマト、輸送船団とともに地球へ戻る。

 で、最後の主題歌が倖田來未・・・とかになるのかなぁ。

例「♪うちゅう~しぇんかん!や~ま~とおおうぉ~いいいいいあショックカノ(モ)ーン!」




 
 自分は今さら知った。

 http://www.hagetaka-movie.jp/

 好感が持てるのは、改まってこれまでの再編集というのでなく、さらにその続編としてスケールアップすること。蘇った鷲津が新たな敵を迎え撃つ・・・まさに自分が欲していたシナリオだ。サブタイトルに何か欲しいくらいだ(例:蘇る鷲津)。

 「サーガ」で何度かPRしたかいがあった!この勢いで「監査法人」も!いやむしろ、共演させて欲しいのだが。

 「ハゲタカ」未見の人は、5月4-6日の再放送(NHK総合)を見逃すな!

 
 WOWOWで鑑賞。

 ロバート・レッドフォードがおそらく、映画にメッセージ性を残す最後の人間ではないだろうか・・・。リアルな戦争映画などはリドリー・スコットやオリバー・ストーンらのほうが上かもしれないが、レッドフォードのはもっと感情に訴えるものだ。そして単純な結論に終始しない。あとは自分で考えるのだ、と。

 何度も言うことを聞かないスタッフ。患者・家族からの苦情。同じ過ち。しかし人手不足を理由に制裁されない。そんなとき、僕の出番になる。で、レッドフォードのごとく<面接>を行う。

 まず、相手に全部喋ってもらう。ただ今の若い人たちはフランクすぎて、そもそも日本語が遠まわしたる所以を考えようとしない。ことが多い。「斉藤さん」みたいなのが手本なのか?

「じゃあどうしたらいいんですか?」
「結論は何ですか?」
「僕に何をしろと言うんですか?」

 とりあえず、答えはこれだ。

「今度会うまでに、考えて来い。1つは何かあるだろう」。

 とレッドフォード的にいきたいところだが・・・。

(現実↓)

「オレが知るかそんなの!ったく!ちゃんとせいよちゃんと!ヘイ!リッスントゥミー!」(←怒ったトム・クルーズ?)



 
 早乙女研究所。メカザウルスが出現。ゲッターチーム出動。ゲッター1のリョウの声はまだイガイガしておらず、伸び伸びとした声音。

「チェーンジ!ゲッターゥワン!スイッチ!オン!」
「ゲッタ~トマホゥーク!(間)ブーメラン!」
「ンゲッタ~~~ビィ~~~~ムッ!」

 掛け声やリアクションも絶妙。

「とうっ!」「おうわっ!」と大げさ。

 熱血漢のゲッター1は循環器科向け。


「リョウよ、ここはいっちょゲッター2で巻き返そうぜ!」ゲッター2のハヤト。ちびまる子のじいさん。

「チェーンジゲッターツゥ!スイッチ!オン!(即)ドリルア~~~~ム!」

 クールにこなし自ら出番も少ない、ゲッター2は呼吸器科向け。


「最後は俺だ!チェーンジゲッタースリー!スイッチ!オン!(主題歌、すでに終わりかけ)」

「大雪山おろし~~~!(恐竜、転倒)ゲッターミサイル!(爆発)」


 締めくくりのワンパターン。ゲッター3は・・・これも循環器科向け?



 あ、この人を忘れていた。早乙女博士。

「あーこらリョウくんハヤトくんムサシくん!」

 ゲタでカランコロン、博士は明らかに開業医向け。


 





 BS-hiで毎週土曜日に放送中。驚くほどのクオリティ画質。お馴染みの吹き替え。吹き替えコロンボの独特の言い回しは実生活では活かせそうにないが、我が振り直すための<背後霊キャラ>として覚えておきたい。

「ははぁ。あなた、あのナース狙ってますなぁ?外見で選ぶとは、お医者さんらしくないですなぁ。あ、そうか。鑑別診断してその結果というわけですか。ならまず見かけからですかなぁ。でもあなた、この前他のナースを誘ってフラれてましたな?あ、除外診断されたわけですかそうですなぁ。除外するためには検査がいるのに、お呼びでなかったわけですな。そりゃ不幸だ。でもおケツ、いや虎穴に入らずんばって言うでしょう?ちょっと違うかな。そういやあなた、さっきのケバい女には妙に冷たかったですな。ああ、除菌治療ですか。でも悪い虫ってのは、結局再発するんですなぁ。なんで知ってるかって?カ・ンですよ。カ・ン」

 夜間の病棟で、たまに他の医師担当患者のフィルム・カルテを並べて自分カンファレンスをやるのですが、これは当直医の特権ですなぁ。どうしてって、ほらいつ誰が急変するか分からんでしょうが。前もって予習しておくんですよ。ナースも安心するらしいんですな長くいるほど。そしたら知らん間に、詰所は私とモニターの音だけなんですなぁ彼らどこ行ったのか。まあそれはいいとして。でも結局カルテの字が読めないのが多くて、困るんですなぁ。医学部では読まれないためのテクニックとか教えてるのかなぁ。・・・それで学生生活長いの?あなた?(覗きこみ)





 


 この年にもなると、健さんのキャラに著しく惹かれる。背中でモノを言う人間。健さん邦画のキャラは一定しているのだが・・・不思議だ。ありそうで、ありえないキャラのようで、なれそうでなれそうにない。以下の条件が必須。

・ ふだんは無口
・ ケンカが強い
・ 仕事が熱心でまじめ
・ スポーツ万能(ふだんは感じさせない)
・ 料理が上手
・ 余計なことを言わない
・ 子供に好かれる
・ 一度は暴力は許すが、キレたら過剰なほどの攻撃力(一撃)
・ 暴力沙汰の既往がある
・ 女性がほっておかない(未亡人が多い?)
・ なかなか泣かない
・ 横向きで礼をして立ち去る(無言で)


 その冷静さは見習いたい。相手がモンスターのときは、健さんキャラに立ち返ってそれを見習いたい(暴力以外)。

 でも一番医師に必要な健さんキャラは、ズバリ「ピンチのときにこそすぐに現れ(対応し)、自分を助けてくれる」というものだろう!

 健さん医師の携帯番号を求む!











 医者にも旧ボンドファンは多い。高級外車+高級スーツに高級料理。急な呼び出しに医局秘書。実際には旧ボンドのように華麗な世界がないにしても、仕事が終わってカッコよく立ち去るその様は、まるで旧ボンド映画のラストシーン(中年以上の医者が良い)。

 自分の場合は、病院を出ると(夜7~8時)いつも誰かが立っているのに出くわす。たいていナース数人で厚化粧。これから飲みに行く予定の連中だ。飲み会を断り、数歩進むと・・・そのうちの1人が携帯で話している。

「うんわかった!ああ先生!ちょっと待って!病棟に今すぐ戻ってって!」
「・・・・・」
「走る走る!」
「(駆け足)」

 ジェームズ・ボンド・ウィル・リターン。

 

男のロマン 続き

2008年12月22日 映画

 さきほどの続き。

「父親が出てきたはいいが、借金は俺が背負うのか・・・ま、いっか!」

 吹っ切れてしまい、閑古鳥の鳴く診療所を延々と経営。


「(それを作れば、アレは来る)」
「はいはい。わかりましたって!」

 自暴自棄な赤字経営をするうち、そこのナースとデキてしまう。

「なるほど。こういうアレだったら上等だ!かかってこい!」

 で、とうとうナースが身ごもってしまう。

「まさかアレが来んと言われるとは。そういう意味か。あああ・・・」

 放漫経営が続き、借金を重ねる。

「(それを作れば・・・)」
「もう作るもんなぞ、ない!」
「(ピー)」
「ホワッ?」

 畑から、ぞろぞろスーツの男たち。名刺。

「不渡り2回目!倒産だ!」

 銀行の奴ら!


男のロマン

2008年12月22日 映画

 20代のときに見て以来、今回BS-hiの放送で改めて鑑賞。印象が全然違った。これは、父親像のとらえ方が変わったせいかもしれない。

 心の声に従って、とりあえずあるものを造り出す。それからその意味を考える。年を取るとまず結果のほうから考えてしまい、それに許される範囲のものを作り出すことしかしない。

 そう考えると、思いきって開業するというロマンにもあこがれる。

「(それを作れば、アレは来る)」
「ホワッ?じゃ、開業すればいいんだな?」

 とりあえず、僻地に作った診療所。

「(それを揃えたら、アレは来る)」
「ホワッ?じゃ、揃えたらいいんだな?」

 医療機器を多数購入。電子カルテも。

「(単価を上げれば、アレは来る)」
「ホワッ?今度は具体的だな。じゃあそうするよ!」

 不必要な検査を次々と投入。



 そしてついに、<アレ>は来た。畑の隙間から、ゾロゾロと・・・。

 スーツ集団。差し出される名刺。

「医療対策課だ!これより緊急監査を行う!」

 外で打ちひしがれる。

「あああ・・破産だ。返済もどうなることやら」

 すると、父親医師が。

「父さん・・・?キャッチボールしよう!」

 父親がボールを受け取ると、そこに<借金>の文字。

「なに?わしは面倒みんぞ!」投げ返し。
「保証人に!」投げ返し。
「いやだ!」
「たのむ!」

 親子のキャッチボールが続く・・・。




 この存在感。もちろん、アルパチーノのことである。なんと巧みな話術。ジェスチャー。彼なら悪をも善にまで高めることができる。

 たとえば、ある医者を僻地に呼びたいとき。

(通常)

「わが自治体病院は医師不足でして、地域の皆さんが医療を満足に受けられず困っております。そこで先生のお力をお借りして、地域に根差した医療をともに目指したいと切に願っております」

(パチーノ)

「うちは僻地だ。どうしようもない。僻地だからだ。誰がそれを作った?わしか?わしもその一人だ。では誰のうちの1人だ?住民の!ユー!ユー!全住民の1人だ!それで誇りを失うのか?地域のために全力を尽くした我々が、子を育てて全うに生きてきた我々が!(目をギロッと医師に向け、しずまる)そこで。(指さす)先生が。いや。(鼻をすする)先生が仮にこの僻地にくれば来たくないだとガッ!ホワイ!ホワイ!・・・(両手をひろげる)待ってるのは激務か?ハ!過労か?ハ!ではその末に待つものとは何だ?ではなぜ人類は地球に降り立った?栄光の末待っていたものとは?(振り向き、またこっちを向く)・・・一人を恐れてどうする?君を?誰が1人にした?我々は決して見過ごしたりはせん目を見ろ少なくとも私が!(机を叩く)この私が!この目がいつ嘘をついた?(以下、人差し指を突き上げてヒートアップ)先生には診療のみを望んでおらん!他の僻地と一緒にするな望むのはむしろ支配だ!支配だけで足りるな診療の代償を求めろ!食い物?そこらにある!女?星の数ほど!休暇?エブリシング!そうとも。何でも手に入る。神だからだ。これから刻まれる伝説だ!(両手広げ)・・・モノは信じれば、すでにそこに見えているものだ・・・(口、開いたまま着席)わしには、君が見える・・・」

 パチーノと抱擁。これで契約成立だ!




 これは、かなり傑作の部類に入る。おそらく今年のナンバーワン。

 今は時がそうでない・・・か。なるほど。

 不安な民衆には希望が必要だ。医療では患者がそれに当たる。

 患者への病名告知。病名を隠さず告げることが患者の人間としての権利だという。しかし実際は、それが互いの信頼関係の出来ないうちに、あまりにもアッサリとされてしまっている。そんなモラルができてしまった。今の医療は、それを正義としていいという雰囲気がある。

 その厳しい言動はそもそも、患者にどういう光をもたらすためなのか。あるいはプライドを捨てても言える価値のあることか。嫌われながらも守るほどの意思があるか。時々、立ち止まって考えてほしい。

(自分に言っている) 

 ところで、自分が好きなアクションはこういった構成だ。

 ロケット弾で横の車を狙う→後ろからバットマンのタンクが加速→ロケット弾照準OK←タンク飛び出す

<無音>

 → ドカーン!とタンクに命中

 この無音になるところがいいんだよ!

 
 WOWOWで鑑賞。二コール・キッドマンが全然老けないのは、どうしたことか。

 <invasion>は、医学用語としても頻出。化学療法を研究する際、レセプターの検出を実験していたころを思い出す。ただテーマがテーマだけに、製薬会社によるやや偏ったような?情報提供、論文のどこか不自然で強引なデータ処理、結論に過剰意識の学会(高揚感が凄い)、それに国策っぽさも加わって複雑な気分にさせられたこともある。ただその積み重ねがないと医学は発達しないので、大きな器が必要だし、根気・我慢強さもいる。

 実験がうまくいかないと投げ出しがちになって、やはり自分は臨床に向いていると豪語する医師もいる。しかし、そういう考え方では臨床で壁にぶつかったとき逃避して、結局言い訳する。なので今ひたむきに実験に臨む人間は、臨床でも粘り強さは出せる。はず。

 医師はやがて(ヘボでも)一国の主となり、周囲がイエスマンに固められていく。これが当たり前になると向上心がなくなり、そのベクトルはストップし<インべージョン>される。

「おいお前、そこで何をしている?俺と同じにならんかい!なら平和だぞガッデメ!」

 変化を好まない人間たち・・・。

 田舎地域の人間たちか?確かにそこで医療を啓蒙するのは難しい。そういや、そんな雰囲気が・・・。

 近寄って見てみよう。

(間)

 ヴァー!(嘔吐)


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