落とし穴

2009年9月15日 連載
 
 時間外に、病院へかかるあなた。

 よほどの救急を除き、夜間などに病院へ行く前は・・・一度電話で連絡を。

 当直医は、内容によっては前もって<予習>できる。訴え・既往によっては専門外のこともザラだから。

 コナンみたいにオイオイ、と思うかもしれないが・・・

 それと頼むから、かかりつけの薬は必ず持ってきてくれ。

 それと腹痛で胃カメラまで希望してるなら、メシ食ってから来ないでくれ。

 救急隊にも地域によって出来不出来があり、中には嘘までついて搬送してくるとの評判のところもある。ただ背景には、どうしても患者を取ってもらうためという切実さもあり、一概に責めることはできない。

 ただ、あ~やられた・・・と思うことがある。

「ふらついて歩けないそうです」と電話。

 来たのは・・・アル中。

 アル中を毎回受けるわけにもいかんだろう。なので「酒臭はどうか?」と聞いてみる習慣も必要だ。

 ま、「多少」とか言ってくるんだよな、これが。

落とし穴

2009年9月10日 連載

 高齢者病棟での話だが、「あの先生が主治医になると、なぜか患者が早く亡くなる」という噂を聞くことがある。特に間違った治療をしてるわけでもないようだが・・・

 盲点なのが、低ナトリウム血症。体格の割に点滴しすぎたり(これが主因!)、塩分補給してなかったりと長期化すれば、高齢者は簡単に低ナトリウムに陥る。120mEq/L前半でハラハラ、120mEq/L以下でいよいよ、110mEq/Lを切ると<とうとう・・>といった経過をたどる。痙攣・呼吸停止という形。意識障害も来すため、(誤嚥で)肺炎を発症したりしやすくなる。

 主治医以外が目を光らせてないと、死亡診断書に「心筋梗塞」「脳梗塞」とか書かざるを得なくなる。

落とし穴

2009年9月10日 連載

 きちんと生活して検診でも異常なかったのに、比較的若年でも突然見つかりうる疾患・・・その中に<膵臓癌>がある。腹部エコーで早期発見とはいうが、検査を受ける日、個人差による観察困難、また施行者による差もある。PET検診も1年にそう何度も受ける検査でもない。

 自分が超音波で観察してちょっとでも違和感を感じたら、造影CTはするにしてもMRCPまで追いかけるときがある。単純CTで膵臓の中央に若干lowな一筋の影・・・調べたら膵臓癌だったという経験もある。

 ちょっと違和感を感じた時、それを曖昧にせずにハッキリするまで追求する・・・ことを忘れないようにしたい。

落とし穴

2009年9月10日 連載
 職場の病院が変わって、その地域性を調べる場合。地図を見て、区画の状況を見る。不自然な行き止まり、広い道路の途絶を見かけることがある。中には地図にすら載ってないところもある。おそらく区画整理の際に執拗すぎるほどの反対があったか、利権を持つ者がいたか・・・。自治体の計画を中断させるほどの力があったということだ。

 失礼な言い方だが、それなりの地域はそれなりの地域性がある。引っ越すときの参考に。

 今日もどこかの医師が嘆く。

「ああ、さすが○○地区や!」

落とし穴

2009年9月10日 連載

 喘息で開業医にかかってる人は多いが、毎日のようにステロイドの点滴を受けてる人がいる。常連だと顔パスになることもあるが、ステロイドの(検査フォローなしでの)連日点滴投与で怖いのは頻度の少ない副腎不全より、肺炎の発症と高血糖だと思う(この2つはお互い悪循環する)。

落とし穴

2009年9月10日 連載

 未だに、「トロポニンT陽性」なら急性心筋梗塞と診断していいと思っている者が大勢いる(高齢医師ほど)。数か月前の発症でも陽性持続はありうるし、多臓器不全の一環で出たりすることもある。

 

落とし穴

2009年9月10日 連載

 胸部CTを見るとき、背骨(椎体)を見てる人はあまりいないと思う。だがまれに、それに寄り添う形のものがみられる。

 内縁・・?ではない。縦隔腫瘍(この場合、神経原性が主体)のことだ。

落とし穴

2009年9月10日 連載

 高齢の男性が入院して、付き添う女性。もちろん妻にあたる人と思い「奥さんですか?」と問うたところ「はい」と返事。そのあと、本物の奥さんが。たいてい、前者のほうが品が良い。

 品の良い高齢女性を見たら<内縁>と思え、とまでは言わないが。

落とし穴

2009年9月10日 連載

 忙しい夜間外来のとき、ちょっと時間ができたらのぞきたいのが点滴室。人手が少ない場合ほったらかしになることも多く、何か気付くこともある(滴下速度など落ち具合、終了、漏れ、アレルギー)。

 点滴中の患者に声をかける医師のポイントは高い。そういう話ではないが。

 いったん時間があけば、とにかくうろつく。

落とし穴

2009年9月10日 連載

 胃カメラで観察するとき、気管入口部とその周辺も見る習慣。見てる人は見てるし、見ない人は見ない。名目が胃カメラだと、(咽頭~喉頭の病変を)見落としても罪でないという者もいたが・・・。

 声帯・喉頭ポリープが気になる人(声枯れ)は、検査前に上申してくれれば、なおありがたい。

 

落とし穴

2009年9月9日 連載

 医療でいわゆるオーナーとか言われて崇拝されている人々・・・は、ほとんどが借キング(借金王)。大阪でそれを実感している。

 だから、彼らの生活がいかに非現実的で豪勢なものであっても、それを夢見るなということ。夢を見だしたら最後、常に利益を生むための終わりなき戦いに参加することになる。

 銀行から融資を受け続けることが病院の存続だから、事業が止まってはいけない。大きな融資を受けるには、分院を作ったり建て替えしたりと方法はある。だが、借金は増えていく。

 彼らがいま、考えていることは・・・この借金の行く末だ。これまでは銀行が許してくれていた。でも今後は話が違う。ここから先は書かないが、つまり・・・誰に背負ってもらおうか、という危惧だ。

 そういう人に「ついていきます」とか言うのはやめよう。



落とし穴

2009年9月9日 連載
 人生最大の誘惑は、<高揚感>と思われる。衝動買い~のりピー事件など、あらゆることに関わる。

 勉強面でもそれがある。うまく作用する受験勉強ではいいとして、社会では資格を求めて勉強してそれを取る。若いうちにすべきことではあるが、さらに奥を追求しすぎるあまり、難関な資格取得で<上>に行けるとする者もいる。その背後には、それを焚きつける人間らの存在がある。特に医療では、他人のサクセスでタナボタを狙う人間が多いので。

 医療では最先端を学ぼうとするほど、患者から遠ざかっていく。というか、患者のとこで学べなくなる。選ばれた患者しか診なくなり、自分から選ぼうとする傾向も出てくる。プライドが高くなり、見下げたオーラが出まくる。たいていの人はそうなる。不思議と。

 自分が言いたいのは、もし専門を極めたのならいったん山から下りてこい、ということ。

落とし穴

2009年9月9日 連載

 <愛人>を作る人は多い。作ろうとしてる人を含めると驚くくらいだ。いろいろな話を聞くが、その代償は大きい。男の立場で書くが・・・。

 たいてい<愛人>は20~30歳代。医者の愛人にはそれなりに計画的で、したたかな者が多い。しかし、女の愛人としての?魅力はつまり見た目の劣化はあるピークを越えると著しい。

 問題は特にそこからで、その劣化の状態からその女性の平均寿命などを照らし合わせると・・・ひょっとしたら40-50年も面倒を見なくてはいけない。そこまで人生を捧げるつもりなら、いいかもしれないが。

 えっ。見た目はもう関係なくなってる?そりゃあなた、もうそれは<愛人>ではなぁいでしょうがぁ。立派な伴侶ですよ(コロンボ風)。

 

落とし穴

2009年9月9日 連載

 夜間によく来る腹痛。昼から痛くてもなんとか夕食は食べて、一気にたたみかける。そしてイレウス状態・・というのも当直医泣かせ。

 腹部のレントゲンを立位だけで撮ってしまい、小腸ガスが見当たらないからと帰らせてしまう。実は臥位(あおむけ)では写るはずだったものが・・・。

 ふつうに腹部のレントゲン、と指示するとこうなることもあるので注意。

 ほとんどの病院は、夜間になるとレベルも(どうしても)下がる。人手は少ないし、疲れてるし、別の患者も来るし・・・。なので検査も控え目、ディスカッションも通常ない。時間のかかる手技は、翌日の午前に回される。回す口実にされてもおかしくない(手術適応は別)。

 夜間に来る腹痛は、どうしても<待たされる>ことが多い。

 廊下で響く、ナースの声。

「まだ痛い?んー。そっかー。さっきよりマシ?んー。もっとかー。あー。ちょっとぐらいは?でもないかー。そーやねー。夜やしねー。昼間に来てもらってたらねー(本音)。処置?そーやねー。朝やねー。先生ら、今はお休みやからねー」

落とし穴

2009年9月9日 連載

 急変があって蘇生を開始したとき、1人がアンビューバッグで呼吸、もう1人が心臓マッサージ、もう1人おれば点滴管理・・・

 とんでもない病院では(けっこう多いと聞く)、肝心なことが最初にされてない。痰の吸引だ。特に高齢者では死因に<窒息>が多いからだ。当然、痰による窒息だ。

 そこ、手が止まってる奴!

落とし穴

2009年9月9日 連載

 企業健診の現状をいろいろ聞いたが、採血が食後の状態で行われることは珍しくないらしい。会社の職員は次々と呼ばれるが大人数のところでは無理があり、昼食を摂らせて平然とそのあと呼んだりすることも多いという。言い分としては、会社の流れを左右してまで検診などする余裕はないというもの。

 なので、検診でひっかかった書類を持ってきた場合は(特に採血→)最初から、朝絶食で評価のやり直し。

落とし穴

2009年9月9日 連載

 どうしても見落とされて深刻な問題を起こす疾患・・はいろいろあるが、<解離性大動脈瘤>は毎年どこかで話を聞く。これは心臓から引き続く大黒柱、大動脈の壁がピリピリはがれて強烈な痛みを引き起こすもの。

 タイプにもよるが、この<ピリピリ>いわゆる解離が大動脈弓部(屈曲するところ)で起こると、あたかも左肩が痛い感覚に襲われる。なので、肩の痛みとして整形で片付けられることもある。

 左肩の痛みが持続する以外に何かあった場合、これを疑うかどうか。それ以外の何かとは倦怠感や高血圧など。どう考えてもアンバランスな組み合わせだ。痛みに何か合併すること自体、局所のものではない?と思えばキリはないのだが。

 だがその不自然さから面倒でも検査を行い、これの検索を進めるか。採血での炎症所見、特に白血球増加に注目できるか。CTは造影まで追求する勇気があるか。

 

 

落とし穴 

2009年9月9日 連載

 MRの持参する資料だが、あくまでもこれは<フィルター>を通ったものである。文献を検索してもらったり、本を買ってもらうケースもあろうと思うがこれらにはすべて<検閲>が入っている。

 (内容的に)彼らの自社製品にネガティブな内容がある場合・・・その文献・本は進呈されない。ことが多い。探してあげた資料が原因で、自社の売り上げが落ちたら困るからだ。

 やはり文献は、メインなもの(メジャーな雑誌)は自分の目で確かめておきたい。どうしてもという疑問はやはり先輩への耳学問で(医局か地方会など)。

 

 スクラップ的なものになりそうだが、これから<落とし穴>的なものを取り上げていきたい。自分の経験、聞いた話がヒント。「そんなこと、ありえんだろ?」的な話も。

 ただただ波紋を投げかける、石のようなものかもしれぬ。

< 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 >

 

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索